マスクに関する特許権など

著者:【弁理士】大上 寛

※こちらの情報は2020年5月時点のものです

2020年の2月には、コロナウィルスによる新型肺炎の影響で、マスクや医療品関係の重要が急増し、店頭での品切れなど、供給不足が大きな問題となりました。特にウイルス対策を謳った高機能マスクの需要は高まり、マスクの性能にも多くの注目が集まりました。

今回はマスクに関し、どのような技術が特許権などで保護されているかを簡単にご紹介をさせていただこうと思います。

マスクに関する特許・実用新案登録出願について

2000年1月1日以降に公開されたマスク(国際特許分類:A62B18/02)に関する特許出願や実用新案登録出願は、2020年2月中旬の時点で、2044件が確認されました。

解決課題としては、例えば以下のようなものがあり、これらを解決するための発明や実用新案が出願されています。

  • 使用感、および小型化・携帯性に優れたマスクを提供する
  • マスクと下顎の間、マスクと鼻背との間に隙間が発生しないようにする
  • マスクの耳掛部の長さを調節するための調節部材を設け、密着感と着用感を向上させる
  • ウイルスを効果的に不活化させるウイルス不活化剤を有するマスクを提供する

どうすればこれらの課題を解決できるのか、気になりますよね?

具体的な内容は、公開公報に記載がされており、誰もが自由に閲覧することができます。
公開公報はこちらより検索可能ですので、興味がある方はアクセスしてみてください。最新のテクノロジー満載の高性能マスクを知ることができるでしょう。

マスクに関する意匠登録出願について

日本意匠分類:C4-03(衛生マスク及び安眠用眼帯)、意匠に係る物品の名称:マスクで検索すると、2020年2月中旬の時点で、422件の登録公報が確認されました。

意匠権は、物品の形状などを保護するために有効な権利で、完全に同一の形状のみならず、類似する形状も保護範囲とすることができます。模倣品が出回った場合には、権利侵害の立証が行いやすく、また、税関に対する輸入差し止めも迅速に行うことができます。

不織布を利用した使い捨てマスクは、言うまでもなく長年市場に出回っており、周知の不織布を使用するだけでは特許権の取得は難しい状況であると言えるでしょう。

この点、意匠権については、その形状に新規性や創作性があれば登録が認められるので、よいデザインが創作された際には、意匠登録出願をするのも有効です。

製造国での権利化も考慮に入れましょう

特許権や意匠権を外国でも保護するためには、その外国の官庁に対して出願をして権利を登録する必要があります。

言うまでもなく日本国内の生活消費財は外国製造がされ、輸入されるものが沢山あります。マスクについては、中国で製造され日本に輸出されるものが多く、中国での需要が急増したために日本への供給が減ってしまったというニュースもありました。

マスクのような生活消費財はその製品のみが有する特殊な技術や、形状に基づく機能によって、爆発的に売れる場合があり、また、模倣品がすぐに市場に出回りやすい分野であるといえるでしょう。その分、ビジネスチャンスも潜在していると言えます。

製造国において特許権や意匠権を有することで、その製造国での製造や販売の独占を図ることができます。日本企業がその製造国において営業所などの拠点がない場合であっても、ライセンス付与により現地企業に製造委託、販売委託をすることで、利益を上げることも可能となります。

グローバル化が進む現代において、知的財産権を有効に活用することの重要度がますます高まっているといえるでしょう。