中国企業による日本への特許・商標等の出願

著者:【弁理士】大上 寛

※こちらの情報は2018年10月時点のものです

 秋の気配も深まり、過ごしやすい季節になりました。「読書の秋」とも言われますが、最近のネット社会ですから、「You tubeの秋」なんていう方もいらっしゃるかもしれませんね(笑)。
 私個人(大上)は以前はYoutubeは音楽動画を見るくらいだったのですが、便利な「ノウハウ動画」や、面白い「実験動画」など、自分の興味にマッチするものも多くあり、「Youtubeで検索してみよう」ということが多くなりました。いわゆるユーチューバーによる動画発信の可能性はまだまだ広がりますね。

中国企業による日本出願

 雑談が多くなってしまいましたが、今回は中国企業による日本への特許・商標等の出願件数の統計についてご紹介をさせていただきます。
 携帯電話で有名な「HUAWEI」(ファーウェイ)の日本市場でのプレゼンスは日増しに大きくなります。家電の「Haier」(ハイアール)もすっかりおなじみになりました。

増え続ける出願件数

 さて、上記のような中国大企業のみならず、小さい企業、個人による日本市場への進出の話題も多く聞かれますが、特許・商標などの知的財産件の出願減数は増加し続けております。
 日本特許庁では、毎年年次統計を公表しており、各国企業による年毎の出願件数を発表しております。

 上記統計に基づき、弊所では、2012年〜2017年の中国企業による日本出願の件数をまとめました。

統計表(特許庁ホームページより)

 以上の表から明らかなように、出願件数は増え続けております。

 特に商標の出願件数の伸びは、4530件から8464件というように、約2倍となるほど急増しています。
 8000件のレベルは、米国から日本への出願件数と同等であり、おそらく2018年は米国を追い越して、中国が日本への商標登録出願件数が最も多い国となることが予想されます。

 ちなみに、商標の2017年の出願総数は、約19万件で、外国国籍の出願件数は約3.6万件です。総数の約4.4%ですから、日本企業の出願を含めると、少ないと見る味方もあるかもしれません。他方、外国国籍出願だけをみると、全体の約23%を中国国籍の企業による出願が占めるということになり、約1/4ですから大きな割合であるといえるでしょう。

 出願件数が増えた背景としては、中国の政府機関による補助金も影響しているという側面があるようです。補助金の制度は地方政府などにより様々であって、実態がつかみにくいものでありますが、外国で商標権を取得することで、極めて低コストで権利が取得できるという実態があるようです。
 中国出願による米国への商標登録出願件数も大幅に増えているとのことで、日本経済新聞の一面で関連する記事が掲載されることもありました。

 日本への商品の輸出に際しては、商標権の取得はもはや必須なものと言えます。商標権の侵害品は水際で止めらてしまう可能性もあり、また、アマゾンなどのECサイトでの規制も厳しくなっております。商標権の保有が略必須条件といえる状況であると考えます。

 特許、実用、意匠において同様に出願件数は増加を続けております。数年は増加傾向であることが予想されます。

まとめ

 いかがでしたでしょうか?
 最近は関税に絡めた貿易戦争が激しさをましておりますが、その背景に知的財産権の侵害の問題も存在します。
 中国企業による日本での知的財産権の取得は今後も増加し続けることが予想され、紛争の機会も増えることになるでしょう。
 日本企業と中国企業の争いの構図はもちろんのこと、日本市場での中国企業同士の争いの構図も増えることが考えられます。