【Q&A】不利益変更について

※こちらの情報は2021年7月時点のものです

Q.相談内容

新型コロナウイルスの影響により会社の業績が下がり、残業時間が少なくなったため従業員の固定残業手当の廃止を検討していますが、何か問題がありますか。

A.回答

固定残業手当の廃止は従業員にとって労働条件の不利益変更となるため、原則、従業員の同意をとっていただく必要がございます

前提として、労働条件は会社と従業員の同意のもとに成立します。労働条件を変更するときも同様に同意で成立しますが、実務上就業規則が整備されている場合は、就業規則を変更し労働条件を変更させることが一般的と考えられます。

しかし、今回のケースのように労働者の不利益になる労働条件に変更するときは、労働契約法第9条より原則同意が必要となります。つまり、同意を取る前に就業規則の変更をしたとしても、その変更内容が労働者にとって不利益な労働条件であれば、変更することができません。

ただ、例外として、労働契約法第10条より就業規則を変更(固定残業手当を廃止)し、その就業規則を周知させた場合、その変更について合理的な理由があれば、固定残業手当を廃止することは可能です。合理的なものの判断基準は、固定残業手当の廃止になることでどれくらい不利益を従業員が被るか、固定残業手当を廃止することの必要性など諸般の事情により考慮されます。

具体例

例えば、固定残業手当の制度を廃止するとなったときに、導入となった経緯によっては、合理性が認められる可能性が高いとされます。給与計算上の便宜を図る為に導入した場合、固定残業手当が従業員の給与を保障するために導入したわけではないため、不利益の程度は低くなると考えられます。また、新型コロナウイルスの影響で業績が低下し、今までよりも残業時間が少なくなった場合、固定残業手当の廃止を検討することは、労働条件の変更の必要性が高いと言えるため、合理的な変更であると考えられます。

この不利益変更に関する同意の例外については、従業員とトラブルとなる可能性が高いため、原則は同意を取って頂く必要があると考えられます。
同意の取り方の一例として、会社が従業員に対して厳しい経営状況、固定残業手当を廃止することの経緯を説明し、個別に面談等を行い、従業員の理解を求めると共に相談に応じ、そこから、個別に同意を取り、労働契約法第4条に基づき書面にて変更後の条件を文書で明示することが望ましいと考えられます。

【参考URL | 厚生労働省ホームページ】
労働契約の成立及び変更 | リーフレット
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoukeiyaku01/dl/13_0003.pdf