試用期間の設定について

著者:【社会保険労務士】高橋 幸子

※こちらの情報は2019年9月時点のものです

企業の人手不足が深刻化している中、入社試験は面接のみですぐ採用、翌日から入社というケースも少なくありません。
面接では問題なく優秀な人材が入社したと思いきや、実際に配属したところ、会社が期待した能力を発揮できないということがあります。

今回は採用時に設ける試用期間設定の留意点とその運用について再確認したいと思います。

試用期間とは

そもそも試用期間とは、今後、自社の従業員として中長期的にふさわしい人材であるか、適格性を判断するための期間になります。試用期間以後も採用されることが前提となっておりますが、試用期間中に適格性に欠けるとして、会社が一方的に従業員を本採用しないと決めて通知することは、一般的には解雇(留保されていた解約権の行使)の扱いとなります。

しかし、長らく働いている通常の従業員を解雇することに比べ、緩やかに判断すべきと考えられています。但し、試用期間中であっても解雇の理由は合理的なものでなければならず、対象となる従業員へ能力面や行動面などの適格性に欠ける部分を具体的に示した上で、会社は教育や指導を行い、能力の向上や勤務態度の改善を目指す必要があります。

なお、試用期間中であっても解雇予告や解雇予告手当の支払いが必要ですが、雇い入れから14日以内のときは不要とされています。

試用期間の長さ

試用期間の長さは一般的に3ヵ月から6ヵ月程度で定められていることが多くありますが、長さについて法律上の規定はありません。但し試用期間中の従業員の身分は不安定なものとなるため、極端に長い期間を設定した場合には裁判等において無効とされる危険性があります。

試用期間の延長

様々な理由から入社当初に設定した試用期間では本採用の可否を判断できないケースも想定されます。このような場合には試用期間の延長を検討しましょう。その際、対象となる従業員に試用期間を延長する旨及び延長する期間を伝えると共に会社が従業員として期待する業務水準等を明確にしておくことが延長後に本採用可否を判断する際のポイントになります。

就業規則への規定

就業規則に次の事項が定められていることを確認し採用時に試用期間があり従業員としての適格性を判断している旨の説明は忘れずに行いましょう。

  1. 試用期間の目的、長さ
  2. 試用期間中の賃金や労働条件
  3. 本採用しない場合の基準
  4. 試用期間の延長に関する事項
  5. 勤続年数の算定にかかる試用期間の取扱い

実際の運用においては、知らないうちに試用期間が経過していたということもよくあります。就業規則を整備するとともに、試用期間が終了する前に直属の上司から従業員の勤務態度等を確認しておくことも忘れずに行いましょう。