待ったなしの2025年問題

著者:【谷野会計事務所】谷野 芳枝

※こちらの情報は2018年2月時点のものです

 2017年6月に実施された「国民生活に関する世論調査」の調査結果が、8月に発表されました。この世論調査は、内閣府が毎年実施しているもので、これによって国民の多くがどのような生活感覚をもって日常を過ごしているのか、その概要を知ることができます。

 現在、国の財政状態が悪化しており、医療・介護などの社会保障費の増大に伴なう個人負担への転嫁や、年金の支払い開始時期の延期が避けられないのではないかなどの問題が深刻化している中で、将来に対する国民の不安が大きくなって不思議ではないにもかかわらず、今回の調査結果はここ数年にも増して、意外に「良い」ものでした。
 しかし、いわゆる2025年問題が待ったなしになってきていますので、国民の満足度が意外に高い今のうちに、準備しておくことがたくさんあるのではないでしょうか。

2017年世論調査の結果の概要

現在の生活に対する満足度

 全体として、現在の生活にどの程度満足しているか聞いたところ、「満足」とする者の割合が73.9%(「満足している」12.2%+「まあ満足している」61.7%)で、「不満」とする者の割合が25.0%(「やや不満だ」19.9%+「不満だ」5.1%)となっています。
 性・年齢別に見ると、男性、女性とも18〜29歳で「満足」とする者の割合が高く、男性の50歳代で「不満」とする者の割合が高くなっています。

  • 所得・収入
     所得・収入に対する満足度については、「まあ満足している」(43.4%)を含めると51.3%が満足していると答えています。
     「不満」とする者の割合は、男性の40歳代と60歳代で高くなっています。
  • 資産・貯蓄
     資産・貯蓄に対する満足度は、「まあ満足している」(38.7%)を含めると44.4%が満足しているとしています。これを年齢別に見ると、「満足」とする者の割合は60歳代と70歳以上で高く、「不満」とする者の割合は30歳代から50歳代で高くなっています。

現在の生活の充実感

 日頃の生活の中での充実感を聞いたところ、「充実感を感じている」とする者の割合が73.5%、「充実感を感じていない」とする者の割合が24.9%となっています。

日常生活での悩みや不安

 日頃の生活の中で、悩みや不安を感じているか聞いたところ、「悩みや不安を感じている」と答えた者の割合が63.1%、「悩みや不安を感じていない」と答えた者の割合が36.4%となっています。悩みや不安を感じていると答えた者にその内容を聞いたところ、「老後の生活設計について」を挙げた者の割合が53.5%と最も高く、以下、「自分の健康について」(52.1%)、「家族の健康について」(42.1%)、「今後の収入や資産の見通しについて」(39.7%)などの順となっています。

生活の程度

 世間一般からみて、生活の程度はどうかと聞いたところ、「上」と答えた者の割合が1.1%、「中の上」と答えた者の割合が14.2%、「中の中」と答えた者の割合が56.5%、「中の下」と答えた者の割合が21.7%、「下」と答えた者の割合が5.0%となっています。

2025年問題

 国民生活に関する世論調査では、実に4分の3近くの人が現在の生活に満足していると答えているわけですが、その中でも、日頃の生活の中で悩みや不安を感じている人は多く、その一番の理由は「老後の生活設計」でした。

 この「老後の生活設計」に大きくかかわるのが2025年問題です。2025年とは、団塊の世代と呼ばれる昭和22年から24年生まれの人たちすべてが、要介護となる確率の高まる後期高齢者(75歳以上)の年齢に達する年です。

 現在でも、日本の社会保障関係費(社会保障給付の国庫負担)は31兆円を超え、国家予算(約96兆円)の約3分の1を占めていますが、2025年には後期高齢者数が2015年(約1600万人)と比較して約4割も増えることにより、介護費用は現状の約10兆円から21兆円へと倍増し、さらに深刻なことには、介護専門職が38万人も不足すると推定されているのです。

  現状のまま推移すれば、予算も専門職も足りず、医療も介護も、ひいては国家財政もパンクしてしまいます。この問題を解決するためには、限られた財政と人的資源の中で、ただ単にサービスの縮小を図るのではなく、より効率を高め、質も維持・向上していくことを考えながら、乗り切っていくための知恵を出していく必要があります。

2018年介護報酬改定の論点

 2025年問題を間近にひかえて、至急に取り組まなければならないのが、介護報酬の見直しの問題です。

 社会保障費の中でも高騰を続けている介護費用については、今後、抜本的改革が避けられません。その一つとして、2018年度に医療と介護報酬の改定が予定されています。医療や介護が必要になった時に、私たちの生活に大きく影響してくることになりますが、改革に向けて進んでいかなければなりません。この介護報酬改定については、以下の7点が論点となっています。

  • 保険者機能の強化などによる地域の実情に応じたサービスの推進
  • 介護療養病床のあり方なども含めた医療と介護の連携
  • 地域支援事業・介護予防の推進
  • サービス内容の見直しや介護人材の確保
  • 軽度者への支援などを含めた給付のあり方
  • 利用者負担や費用負担のあり方
  • 保険者の業務簡素化や被保険者範囲などその他の課題

 介護保険制度は今後も大切に維持していかなければならないものです。制度が破綻しないように、他人ごとではなく真剣に考えていきたいものです。

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