商標の不登録事由について

著者:【弁理士】大上 寛

※こちらの情報は2020年9月時点のものです

皆さんこんにちは! 弁理士の大上です。9月に入りまだまだ暑い日が続きますね。節電対策でエアコンの設定温度の上昇など、環境が厳しい?こともあるでしょうが、仕事に集中すると暑さも忘れるそうです(笑)。

他方、今年からテレワークを実施されている企業も増え、自宅で業務をされている方も多いと思います。オンライン会議などの体制も整えることで、通勤、出張、移動の機会も大幅に削減することができます。真夏の移動は体力も消耗しますし、テレワークの良いところがますます注目されることでしょう。

さて、今回は商標の不登録事由(出願しても登録にならない商標)についてのお話をさせていただきます。

特許庁のホームページにも記載されておりますが、商標の不登録事由には以下の3つのものがあります。

  1. 自己と他人の商品・役務(サービス)とを区別することができないもの
  2. 公共の機関の標章と紛らわしい等公益性に反するもの
  3. 他人の登録商標や周知・著名商標等と紛らわしいもの

以下順に説明をさせていただきます。

1.自己と他人の商品・役務(サービス)とを区別することができないもの(識別力なし)

例えば、商品「うどん」に使用するものとして商標「うどん」を出願した場合、そのような商標「うどん」は普通名称なので登録が認められません。また、

  • 産地や商品の品質
  • 役務の提供場所
  • ありふれた氏
  • きわめて簡単な記号
  • マーク

も登録が認められません。
これらは、識別力がないとして、独占が認められないものであります。

商標権は独占排他権です。仮に、うどんの商標としてシンプルな「ざるうどん」の登録が認められてしまうと、商標権者以外の人は使用ができなくなってしまい、妥当ではありませんね。

他方、一見シンプルな商標であっても、使用により有名になり識別力が獲得された状況となっていれば、登録が認められる場合もあります。長年の使用により、商標が有名になっている場合には、逆にその商標を登録して保護する必要が生じることと言えるでしょう。

2.公共の機関の標章と紛らわしい等公益性に反するもの

例えば、国旗や赤十字マーク、地方公共団体の著名な標章に類似するものや、品質誤認を生じさせる商標などがあります。これらの商標は、公益性に反するとして登録が認められないこととなっています。

国旗等については、わかりやすいと思います。
品質誤認については、例えば、指定商品「ビール」に使用する商標「○○ウィスキー」を出願した場合などが考えられます。このような商標が付与された商品が販売されると、消費者は「ウィスキー」と思って購入したのに「ビール」を買ってしまった!ということが生じることになります。

3.他人の登録商標や周知・著名商標等と紛らわしいもの

他人の氏名、名称又は著名な芸名、略称等を含む商標や、他人の周知商標などです。有名な芸能人の名前や、著名ブランドの商標を出願した場合には登録が認められないことになります。

例えば、商標「山田○○」の出願をすると、上述した1番の識別力なしの問題については、文字全体がデザインされていて特徴的な場合には、識別力が認められる可能性があります。識別力があったとしても、他に「山田○○」さんが存在する場合には、その方の了承を得なければなりません。実際に、一回拒絶を受けたものの、他人の了解を得ることで登録が認められるケースもあります。

例えば、芸能人や、有名占い師の氏名の登録も存在しますが、これらは、本人の了解を得た上での登録であると考えられます。

まとめ

商標は何でもかんでも登録が認められるものではありません。時々、こんなの登録になるんだ!というものに遭遇しますが、そのような登録は、厳しい審査をくぐり抜けて登録になったものと言えるでしょう。