テレビ番組の放映に関わる著作権

著者:【弁理士】坂根 剛

※こちらの情報は2020年12月時点のものです

東京オリンピック2020の開催がどうなるのか、スポーツファンならずとも多くの人がその動向に注目しています。最近では、色々なスポーツが無観客で開催されています。テニスやゴルフの海外メジャー大会も無観客で開催されました。色々な制約が伴うことは避けられないと思いますが、何とか開催されることを期待しています。さて、オリンピックが開催されれば、スポーツバーなど多くの店でオリンピック放送を中継するでしょう。今回は、スポーツバーなどの店におけるテレビ番組の放映に関わる著作権の問題についてお話します。

テレビ放送

テレビ局から放送されている各種の番組は、テレビ局によって製作された著作物です。放送されている番組をテレビ受信装置で受信し、公に伝達する権利は、公の伝達権と呼ばれています。
著作権法第23条第2項には、公の伝達権について、以下のように規定されています。

著作者は、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有する。

「公衆送信」とは、テレビ放送やインターネットによる配信のことです。この規定によれば、著作権者に無断でテレビ放送された番組をテレビ受信装置を用いて公に見せる行為は著作権侵害となります。

店舗におけるテレビ番組の放映

街の定食屋さんでは、店内にテレビ受信装置を置いて、プロ野球中継やバラエティ番組を放映していることがよくあります。こういった行為は公の伝達権の侵害行為となるのでしょうか。公の伝達権には例外があり、その例外について、著作権法第38条第3項に以下のように規定されています。

放送され、又は有線放送される著作物(放送される著作物が自動公衆送信される場合の当該著作物を含む。)は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けない場合には、受信装置を用いて公に伝達することができる。通常の家庭用受信装置を用いてする場合も、同様とする。

つまり、営利を目的としない場合、又は、通常の家庭用受信装置を用いる場合には、テレビ放送を公に伝達することが許されています。先ほどの定食屋さんの例であれば、店内に設置されているテレビ受信装置が家庭用のテレビ受信装置であれば問題ありません。しかし、スポーツバーが、スポーツ番組が店内で放送されていることを宣伝し、さらに、大型スクリーンでスポーツ番組を上映しているような場合には、いずれの条件も満たさないため、著作権者の許可が必要となります。

まとめ

街の定食屋さんでプロ野球放送を流すことはOKです。よかったですね。こういった行為まで著作権侵害となると、なんだか息苦しくなりそうです。でも、調子に乗って超大型テレビやマルチディスプレイを設置して、大画面でプロ野球放送を流すとアウトになる可能性が高いです。気を付けましょう。