著作権について

著者:【弁理士】坂根 剛

※こちらの情報は2018年11月時点のものです

 最近は著作権に絡むニュースを新聞、テレビ等で見かけることが多くなりました。日本においても著作権に対する意識が少しずつ高まってきているように思います。過去、日本において著作権に対する意識が低く、しばしば著作者の権利が軽視されてきた経緯があります。個人の権利が社会で保護されること、各人が他人の権利を尊重することは、先進国にとって重要な環境であると思います。

今回のテーマは著作権です。特許権や商標権と比べても個人の活動と関わりの深い著作権について、基本的な考え方を説明します。

著作権法の目的

 著作権は、特許権、商標権等とともに知的財産権に分類される権利です。特許法や商標法が産業の発展を目的としているのに対して、著作権法は、文化の発展を目的としています。著作権法第1条は以下のように規定されています。

(第1条)
この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とする。

著作物とは

 著作物については、第2条第1項第1号において「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と定義されています。そして、第10条には、著作物として以下の例が挙げられています。

  1. 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
  2. 音楽の著作物
  3. 舞踊又は無言劇の著作物
  4. 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
  5. 建築の著作物
  6. 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
  7. 映画の著作物
  8. 写真の著作物
  9. プログラムの著作物

 小説、音楽、絵画、映画、写真、プログラムなどが著作物であって、これらが著作権で保護されることは、今の日本の社会では周知のこととなっているでしょう。上記の例には、他にも舞踏や地図が含まれています。例えば、バレエやダンスの振り付けは舞踏の著作物に該当します。出版されている地図やホームページで公開されている地図も著作物に該当します。

著作者が有する権利

 著作物を創作した著作者は、著作者の人格的な利益を保護する“著作者人格権”と財産的な利益を保護する“著作権”とを有します。著作者人格権の一つに同一性保持権があります。同一性保持権は、著作者が自分の著作物の内容や題号を、自分の意に反して改変されない権利です。
 例えば、他人の著作物である絵画を無断でアレンジすることは著作者が持つ同一性保持権の侵害となります。財産権である著作権の内容は多岐に亘ります(下表、第21条〜第28条参照)。
 例えば、他人の著作物である小説、漫画、絵画、写真等を無断でコピーすることは、複製権(第21条)の侵害となります。ただし、家族内での利用など私的使用の範囲での複製は許されます。

最近では、色々なコンテンツがデジタル化されインターネット上で扱われるようになりました。そして、デジタルコンテンツの違法コピーが特に問題となっています。インターネット上に無断でアップロードされた音楽データ又は動画データをダウンローすることは、私的使用であっても複製権の侵害となります。また、音楽データ等を無断でインターネット上にアップロードする行為は公衆送信権(第23条)の侵害となります。

著作者が有する権利
  • 著作者人格権
    公表権(第18条)・氏名表示権(第19条)・同一性保持権(第20条)
  • 著作権
    複製権(第21条)・上演権及び演奏権(第22条)・上映権(第22条の2)・公衆送信権等(第23条)口述権(第24条)展示権(第25条)・頒布権(第26条)譲渡権(第26条の2)貸与権(第26条の3)・翻訳権、翻案権等(第27条)二次的著作物の利用に関する原著作者の権利(第28条)

 今回は、著作権の基本的な考え方について大枠だけを説明しました。次回以降、著作物の内容、著作権の内容などについて少しずつ詳細を説明する予定です。