意匠登録出願について

著者:【弁理士】大上 寛

※こちらの情報は2018年12月時点のものです

 新年明けましておめでとうございます。本年も特許や商標についての話題を提供させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
  2020年の東京オリンピックも来年に迫りました。弊所のございます新宿住友ビルの隣りにある東京都庁では、オリンピックのカラフル(5色)なライトアップがされております。『インスタ映え』間違えナシですね!(笑)。新宿にお越しの際は是非一度御覧ください。

 さて、今回は意匠登録出願のお話をさせていただきます。

意匠とは?

 『プロダクトデザイン』『工業製品デザイン』といえばご理解いただきやすいと思います。例えば、大型のものであれば、『自動車、船舶、飛行機』といったもの、中型のものであれば『テレビ、椅子、タンス』といったもの、小型のものであれば『食器、弁当箱、箸』といったものがあります。
   また、『アイスクリーム』といった食べ物もデザインとして登録することができます。
 つまり、ほとんどの形があるものは、意匠登録の対象となります。なお、ビルなどの不動産は、量産できるものではなく、基本的には登録の対象とはなりません。

 なお、意匠法では、『物品(物品の部分を含む。)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって視覚を通じて美感を起こさせるもの』と規定されておりますが、最近の法改正では、スマートホンの画面のデザインについても、意匠登録が認められる様になりました。

意匠権を取得するメリット

 意匠権を取得すると、そのデザインを独占排他的に使用することができます。つまり、他人に真似をされた場合には、販売行為の差し止めや、損害賠償請求をすることができます。

 工夫を重ねて完成したプロダクトデザインはひとしおの思い入れがありますよね。そのデザインが無断に使用される。しかも、よいデザインなので模倣品がどんどん売れてしまう…。そんなことは許されるべきではありませんね!

 意匠権の権利期間は設定登録日から最長で20年です。20年間自社のデザインを保護することが可能なのです。

 また、意匠権の権利範囲は、完全に同一の他、類似の範囲も含まれます。つまり、細部を変更した模倣品に対しても、類似の範囲内であれば権利行使ができるのです。

意匠権の権利を行使する場面

 どのような場面で意匠権の権利を行使することができるでしょうか?

 答えは、意匠に係る物品の製造、使用、譲渡、輸出または輸入等です。ここで、輸入行為については、税関(水際)で模倣品をストップし、日本国内での流通を阻止することができるので、非常に重要なポイントです。

 つまり、製造コストの低い海外で生産された製品を税関でストップすることで、より効果的に権利行使が可能となります。

 税関で侵害品を取り締まってもらうためには、『差止申立書』を税関に提出することが必要です。詳しくは、財務省関税局のHPをご参考ください
https://www.customs.go.jp/mizugiwa/chiteki/

 この税関のHPでは、受理された申立が頻繁に更新されております。商標権についての申立がとても多いですが、特許権や意匠権についても情報がありますので、ぜひご参考ください。

権利取得の注意

 『いいデザインができた!』、『さっそくプレスリリースしよう!』、『サンプル作成を外注しよう!』、『展示会で派手にプレゼンしよう!』というまえに、ご注意いただきたい点があります。

 それは、意匠登録出願前に世の中に公開されてしまうと(秘密状態が解除される)、新規性を失ってしまい、出願しても拒絶されてしまうということです。
  ですので、よいデザインを思いついた場合には、『ウッシッシッ』となりながらも、まずは落ち着いて意匠登録出願のことを思い出してください。

 協力会社にサンプル作成や図面作成をお願いする場合には、事前に秘密保持契約などを結ぶことが重要です。
  なお、展示会などでの公開や、販売を出願前にしてしまった場合でも、一年以内であれば『新規性喪失の例外適用』を受けることが可能ですので、「やっぱり意匠権がほしい!」となった場合には、諦めずに再度出願をご検討ください。

まとめ

 プロダクトデザインは、商品の売れ行きを左右する重要な要因です。現時点で市場に出さないものであっても、先進的なデザインを予めストックし、先取り的に権利化しておくことで、いざ市場に出回るときには意匠権を活用しながら優位にビジネスを展開することが可能となります。

 2019年を自社のプロダクトデザイン保護元年として、積極的に取り組まれてもよろしいかと存じます。