著作物について

著者:【弁理士】坂根 剛

※こちらの情報は2019年1月時点のものです

 いよいよ平成の時代も残りわずかとなってきました。災害、長引く不況等、平成という文字どおりには平穏な時代ではなかったように思います。次の年号が発表されるのは、4月1日とのことです。次の時代には、日本の産業の活力が戻り、景気のいい話がたくさん出てくるといいなぁっと期待しています!

 今回は、前回に引き続き著作権の話です。前回は、著作権の全体像をざっくり説明しました。今回は、著作物について掘り下げて説明します。

著作物

 著作物は著作権第2条第1号において以下のように規定されています。
 「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」

 著作物は、「思想又は感情」を表現したものであり、データや事実は著作物に含まれません。第10条第2項には、「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」は、著作物に該当しない旨規定されています。例えば、スポーツの結果として、スコアや事実を単に伝達するだけでは著作物にはなりませんが、スポーツの観戦記録を臨場感あふれる文章で表現したものは著作物となります。

 著作物は、「表現したもの」であり、アイデア等は含まれません。思想または感情に独創性があっても、それを具体的に外部に表現しなければ著作物とはなりません。

 著作物は、「創作的に」表現したものであり、他人の作品の単なる模倣などは含まれません。ただし、創作性の判断において上手い下手は関係ありません。幼児の描いた絵や作文も著作物となります。一方でありふれた表現、平凡な表現、ごく短い文章などは創作性を欠くと判断される可能性が高くなります。例えば、キャッチフレーズや題名などは、創作性を欠くと判断される場合があります。

 著作物は、「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」であり、工業製品、応用美術等は含まれません。応用美術とは、鑑賞性よりも実用性が重視される美術のことを指します。日用品、電化製品などの実用品の形態などは著作物では保護されません。工業製品のデザインは意匠法で保護を受けることができます。

著作物の例

 第10条第1項には、以下の9種類の著作物が例示されています。

  1. 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
  2. 音楽の著作物
  3. 舞踊又は無言劇の著作物
  4. 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
  5. 建築の著作物
  6. 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
  7. 映画の著作物
  8. 写真の著作物
  9. プログラムの著作物

二次的著作物

 著作物を翻訳、変曲、変形、翻案したものは二次的著作物と呼ばれます。上で例示した①〜⑨までの著作物を、翻訳、変曲、変形、翻案したものは二次的著作物となります。たとえば、言語の著作物である小説を映画化した場合、映画は二次的著作物となります。また、外国小説を日本語に翻訳した場合も、翻訳された小説は二次的著作物となります。もちろん、二次的著作物を作成するためには、原作者の許諾が必要となります。

編集物著作物

 第12条には、「編集物(データベースに該当するものを除く。以下同じ。)でその素材の選択又は配列によって創作性を有するものは、著作物として保護する。」と規定されています。素材の1つ1つは著作物でなくても、それら素材を集め配置し、編集したものが著作物となる場合があります。もちろん、素材の1つ1つが著作物である場合にも、さらに、その編集物が著作物となる場合があります。
 例えば、新聞は、記事、写真などの選択、配置が創作的に工夫されており、新聞全体として編集物の著作物となります。