著作者人格権について

著者:【弁理士】坂根 剛

※こちらの情報は2019年3月時点のものです

 違法ダウンロードの対象範囲を音楽・映像から著作物全般に拡大する著作権法の改正が進められようとしています。日本は法改正に時間を要する国ですが、著作者の権利を保護するためにも早急な法律の整備が望まれるところです。

 今回も引き続き著作権についての話です。前回は著作物についてお話ししましたが、今回は著作者の権利について説明します。著作者の権利には、著作者人格権と著作権とがあります。著作者人格権は、著作者の人格的な利益を保護する権利であり、著作権は著作者の財産的な利益を保護する権利です。今回は、著作者の権利の中でも、著作者人格権について説明します。

著作者人格権

 著作者人格権は、著作者のみが保有する権利です。著作者人格権は一身専属性を有する権利であり、著作者人格権を他人に譲渡することはできません(著作権法第59条)。また、著作者人格権を他人から相続することもできません。著作者人格権は著作者の死亡によって消滅します。ただし、著作者の死後も一定の範囲で著作者人格権は保護されます(著作権法第60条)。著作者人格権には、公表権、氏名表示権および同一性保持権があります。

公表権

 公表権は、著作権法第18条に規定されています。かなり長い条文ですので、全文はここに記載しませんが、同条第1項には次のように、規定されています。

「著作者は、その著作物でまだ公表されていないもの(その同意を得ないで公表された著作物を含む。以下この条において同じ。)を公衆に提供し、又は提示する権利を有する。当該著作物を原著作物とする二次的著作物についても、同様とする。」

 公表権とは、著作者が、未公表の自身の著作物を公表するか否かを決めることができる権利です。また、公表権には、著作物の公表の時期、方法について決めることができる権利も含まれます。ただし、著作者が著作物を譲渡した場合には、公表に同意があったものと推定されます(同条第2項第1号)。

氏名表示権

 氏名表示権は、著作権法第19条に規定されています。同条第1項には次のとおり規定されています。

「著作者は、その著作物の原作品に、又はその著作物の公衆への提供若しくは提示に際し、その実名若しくは変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利を有する。その著作物を原著作物とする二次的著作物の公衆への提供又は提示に際しての原著作物の著作者名の表示についても、同様とする。」

 氏名表示権は、著作者が著作物を公表するときに、著作者名を表示するか否かを決めることができる権利です。変名とは、ペンネームのことです。

同一性保持権

 同一性保持権は、著作権法第20条に規定されています。同条第1項は次のとおり規定されています。

「著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。」

 同一性保持権とは、著作者が、著作物の内容又は題号を自分の意に反して勝手に改変されない権利をいいます。例えば、デザイナーが描いたデザインを勝手にアレンジすることは同一性保持権の侵害となります。したがって、デザイナーにデザインを作成してもらった場合であって、後でそのデザインを加工する予定があれば、デザイナーとの間の契約で著作者人格権を行使しない旨の確認を取る必要があります。

 同一性保持権は、著作物だけでなく、その題号にも及びます。題号そのものは著作物とは言えませんが、著作物の題号は著作物の内容を表現したものであり、無断で変更等すれば、著作者の人格権が侵害されるためです。