私的複製について

著者:【弁理士】坂根 剛

※こちらの情報は2019年8月時点のものです

前回は著作権について、特に複製権の話をしました。
無断で他人の著作物をコピーしたらダメですよ、という話でした。しかし、テレビ番組の録画など、日常生活の中では、他人の著作物を断りなくコピーしている場面があります。そのような行為はどうしてOKなのでしょうか?

今回は私的複製について説明します。

複製権

まず、複製権について復習します。
著作権法第21条において、複製権は「著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。」と規定されています。
また、著作権法第2条第1項第15号において、複製は「印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することをいい…」と規定されています。ここでも、複製の1つとして録画が明記されています。テレビ番組の録画も著作物であるテレビ番組の複製に該当します。

私的複製

著作権法第30条において、「著作権の目的となっている著作物は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。」と規定されています。

このように著作権法では、原則として著作権者に無断で著作物を複製することが禁止される一方、自分だけで楽しむことを目的としているような場合は『コピーをしてもいいですよ…』、という例外的な規定が設けられています。
例えば、レンタルCDショップでレンタルしたCDを自分で楽しむために携帯音楽プレーヤーにコピーする行為、または、テレビ番組を家庭内で楽しむために録画する行為は、私的複製の範囲として許されています。

「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」とはどういう範囲でしょうか。
「個人的な使用」ですので、業務上の利用は含まれません。また、著作権審議会第5小委員会報告書(昭和56年)によれば、「人数的には、家庭内に準ずることから通常は4〜5人程度であり、かつ、その間の関係は家庭内に準ずる親密かつ閉鎖的な関係を有することが必要」とされています。
友人同士のグループが親密かつ閉鎖的な関係を有するか否かは個別の事情によると思われます。単なる職場、学校の友人グループは、私的複製の適用の範囲からは外れるでしょう。

また、「その使用する者が複製することができる。」と規定されていますので、業者に依頼してコピーをしてもらうことは許されません。例えば、業者が使用者に代行して、書籍をスキャニングしてデジタルコピーを作成する行為は私的複製の範囲に含まれません。

以上説明しましたように、複製権の「例外的」な扱いとして、「私的複製」が許されています。
著作物等を利用するときは、原則は、著作権者の許諾が必要です。しかし、いかなる場合であっても著作権者の許諾が必要であるとすると、文化的所産である著作物等の公正で円滑な利用が妨げられ、かえって文化の発展に寄与することを目的とする著作権制度の趣旨に反することにもなりかねないためです。

今回は、複製権の例外として、私的複製の話をしました。
次は、さらに、私的複製に対する例外に触れたいと思います。