私的複製の例外

著者【弁理士】:坂根 剛

※こちらの情報は2019年10月時点のものです

いよいよ日本でラグビーのワールドカップが開催されます。そして、来年は東京オリンピックです。スポーツファンにとって楽しみなイベントが目白押しです。できれば生放送で観戦したいところですが、忙しい人はやはり録画ですね。

録画は「私的使用の範囲では許される」でしたね!前回は著作権について、私的複製に触れました。個人的または家庭内で楽しむような場合には、例外的に著作物の複製が認められるというものでした。今回は、例外の例外として、私的複製の例外について説明します。

前回までのおさらい

著作権法第21条において、複製権は「著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。」と規定されています。つまり、他人の著作物を勝手にコピーしてはいけませんよ、という原則の規定です。

これに対して、著作権法第30条において、「著作権の目的となっている著作物は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、…その使用する者が複製することができる。」と規定されています。つまり、例外として私的複製が許されています。

私的複製の例外

例外として認められている私的複製ですが、さらにその例外の例として、以下の①~③の場合には、私的使用として認められない旨、著作権法第30条に規定されています。

公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器を用いて複製する場合

ダビング機を利用した複製は、たとえ私的使用を目的としていても許されません。
たとえば、店頭に設置されたダビング機を利用して、DVDやCDを複製することは著作権侵害となります。ダビング機を利用して多数の複製が行われると、もはや個人的な使用の目的を超えて、権利者の利益を不当に害することになるからです。ただし、コンビニエンスストアに設置されたコピー機において文書、図画をコピーする行為は、現状は私的使用として許されています。

②技術的保護手段の回避により可能となり、又は、その結果に障害が生じないようになった複製を、その事実を知りながら行う場合

いわゆるコピーガードの解除を行うことにより複製を行うことは、たとえ私的使用を目的としていても許されません。コピーを禁止するためのコピーガードを無断で解除するわけですから、悪意があると言わざるを得なく、当然の規定とも言えます。

③著作権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合

いわゆる違法ダウンロードを禁止する規定です。
社会的にも大きな問題となりましたので、知っている方も多いと思います。違法配信であることを知りながら映像または音楽データをダウンロードしてコピーする行為は、たとえ私的使用を目的としていても許されません。たとえばユーチューブに違法アップロードされている動画をダウンロードしてコピーすると、著作権法違反となります。

以上説明しましたように、著作権には色々な例外が規定されており、なかなかややこしくなっています。
しかし、それら例外は、社会の変化に合わせて整備された規定であり、多くは常識的な感覚に沿うものです。これからも文化、技術の変遷に合わせて著作権法は常に改正され続けていくことになります。