店内でBGMを使用する場合の注意点

著者:【弁理士】坂根 剛

※こちらの情報は2020年2月時点のものです

先日、福岡地裁において、福岡市のバー経営者に対して日本音楽著作権協会(JASRAC)が起こした裁判の判決が出ました。福岡地裁は、著作権使用料を支払わずに店内でBGMを流したとして、店側に対して著作権使用料約40万円の支払いを命じました。店内におけるBGMの使用に対する著作権使用料の支払いについては、最近、色々と話題になっていますが、判決が出たのは、札幌の理容店に対する訴訟に続いて2例目です。

今回は、店内でBGMを使用する場合に注意する点について説明します。

店内でBGMを流す行為

カフェ、レストラン、スーパーなど、様々な店舗でBGMが流れています。店内において、BGMとして例えばあるポップグループAの楽曲を流すという行為は、著作権法では、演奏権に抵触する行為となります。著作権法第22条には、「著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として上演し、又は演奏する権利を専有する。」と規定されています。したがって、ポップグループAの音楽CDを購入したからといって、著作権者であるポップグループAに無断で、店内でその音楽CDを用いて楽曲を流す行為は、演奏権の侵害となります。

JASRACによる法的措置

著作権使用料を支払わずに店内でBGMを流している店舗は、実際には相当な数になります。
JASRACは、2015年頃から全国で一斉に法的措置を開始しました。JASRACは、民事調停を申し立て、調停が成立しなかった場合には、訴訟を提起するという手順を踏んでいます。そして、訴訟で判決が出た例が上記の札幌の理容店であり、福岡のバーなのです。

いずれの判決もJASRACの主張が認められ、著作権使用料の支払いが命じられました。

店内でBGMを流す場合に注意する点

これまでは著作権法が浸透していなかったこともあり、著作権使用料を支払うことなくBGMを使用する行為は、多くの店舗で行われてきました。しかし、今後は、著作権法を遵守していく必要があります。実際にJASRACに訴訟を提起されるのは、一部の店舗であり、見せしめ的な印象は否めません。しかし、JASRACは今後も法的措置を粛々と進めるでしょう。JASRACに支払う著作権使用料はそれほど大きな額ではありません。例えば、面積500m2までの一般の店舗であれば、年間6,000円です。著作者の権利を保護するという観点からも、著作権使用料を支払う手続きをすべきでしょう。

音楽CDを使用して、店内でBGMを流す場合は、JASRACに個別に著作権使用料を支払う必要がありますが、有線放送を利用する場合はその必要はありません。有線放送に関しては、有線放送会社によって著作権使用料の支払いが済まされているため、利用者が個別に著作権使用料を支払う必要はありません。

ただし、営利を目的とせず、聴衆から料金を受けない場合には、BGMを流すことに対して著作権使用料は発生しません。例えば、学校の運動会でBGMを流すような場合には、著作権使用料の支払いは必要ありません。