中国国籍出願人(中国企業・個人)による日本への商標出願

著者:【弁理士】大上 寛

※こちらの情報は2020年3月時点のものです

東京オリンピック開催がいよいよ近づいて参りました。東京都庁の周りでは、オリンピック関連のポスターやディスプレイがますます増えてきており、盛り上がっております。
CACグループの東京本社のある新宿住友ビルでは、今年の6月に1階の三角広場のリニューアル工事が完了予定です。屋根付きの「全天候型イベントエリア」で、約2000人収容のイベントスペースが誕生します。一番大きい北側のスペースは、75m×45m(2600㎡)で、564インチの大型ビジョンや、ステージも設置されるようです。オリンピック関連のイベントも多く開催されることでしょう。楽しみですね。

中国飲食店の日本進出

さて、今回は中国国籍(中国企業)からの商標の日本の出願件数について紹介をさせていただきます。以前から「中華料理」というくくりで、麻婆豆腐、チャーハン、餃子など、いわゆるスタンダードな料理を提供する中華料理のお店は多くありましたが、最近は、「羊肉料理」「火鍋」などの、いわゆる専門店を謳うお店が東京でも多く見られるようになったという印象があります。

商標の問題

中国で有名な店舗が、日本に進出し、店舗を出しているケースが増えているのだと思います。また、弊所でも過去に相談を受けたこともありますが、許可なく勝手に中国の有名な店舗名を使用して、日本で営業をしているという業者もおります。中国から日本への旅行者は増え続け、オリンピック期間はさらなる増加が予想されます。「あ、東京にも○○があるんだ!」ということで、本家を真似した店舗に入ってしまう旅行者も多いことでしょう。

このようないわゆる悪意の使用者を排除するためには、日本での商標登録が有効になります。

アマゾン(登録商標)での販売等

アクションカメラ、ワイヤレスイヤホン、モバイルバッテリー、ドローン、などなど、いわゆる電子製品は、中国ブランドで溢れているといっても過言では無いでしょう。日本製品もありますが、中国ブランドであることを気にする消費者は以前より確実に減っていると思われます。これらの分野でも、日本で商標を先取りするケースが数年前より増えております。正規のブランド(いわゆる本家)の日本での商標登録の障害となったり、日本での販売の障害になったりもします。悪徳業者は短期間で利益を上げ、早い段階で雲隠れということも多いようです。

中国国籍出願人(中国企業・個人)による日本への商標出願件数の統計

中国国籍出願人(中国企業・個人)による過去4年の日本への商標出願の件数の統計は以下のようになっております。件数の増加の率は減ってきておりますが、依然として増え続けております。外国から日本への出願件数は、2017年までは米国がトップでしたが、2018年に初めて中国がトップとなりました。ちなみに、2017年の米国国籍出願人による商標出願件数は、8746件でした。2019年の統計はまだ発表されておりませんが、どのようになるか楽しみであります。

出願件数前年比(%)
2015年2616
2016年4530173
2017年8464187
2018年10820128

【参考URL|特許庁ホームページ】
https://www.jpo.go.jp/resources/report/nenji/2019/document/index/0402_01.pdf

むすび

中国企業との取引や、中国から製品を輸入する会員企業様は多いと思います。会員企業様に置かれましては、日本で商標権が取得されているかを事前に確認することが重要になります。商標権を侵害する商品を輸入して損害賠償請求や輸入差し止めの事態が生じることもあります。トラブルに巻き込まれないためにも、商標については、今後も十分に注意をしましょう。