【Q&A】在宅勤務に伴う通勤手当の支払いについて

※こちらの情報は2020年7月時点のものです

Q.相談内容

新型コロナウイルス感染症の影響を受け、在宅勤務を開始しましたが、毎月支給していた通勤手当は支給しなくても良いのでしょうか?また、もし支給しなければならない場合、今後は通勤にかかった費用だけ賃金(報酬)として支給したいのですが、可能でしょうか?

賃金規程の通勤手当支給要件

(通勤手当)
第●条 通勤に電車、バス等の交通機関を利用する従業員に対しては、通勤に係る実費支弁を目的として1か月定期代相当額の通勤手当を支給する。

A.回答

上記の支給要件の場合、労働基準法に規定される賃金の全額払いの原則より、通勤手当は支給しなければなりません。また、支給要件を変更される場合は、通勤手当支給要件の「変更前」、「変更時」、「変更後」の3つに分けて配慮すべき法律をご案内させて頂きます。

変更前

労働基準法(賃金の全額払いの原則)

支給要件は1か月定期代相当額を支給すると規定されているので、1か月定期代相当額未満の金額を支給すると同法に違反してしまいます。

変更時

労働基準法(労働条件の変更)

通勤手当は賃金のため、労働条件の一部と考えられますが、労働者と個別に合意を取ることが原則となります。合意が取れない場合には就業規則(賃金規程)に規定し、労働者過半数代表者に意見を聴取した上でその就業規則を周知して頂ければ、その変更が合理的(変更の必要性、労働者に被る不利益の程度、変更後の就業規則の相当性、労働者過半数代表者との交渉の状況その他就業規則の変更に係る事情に照らして合理的)である限り有効です。

いずれにしても、労働者が納得されるように説明をして頂く必要があると考えられます。

変更後

健康保険法/厚生年金保険法(標準報酬月額 随時改定)

労働の対償として受ける賃金(報酬)ですので、固定的賃金が変動します。もし、例えば遠方から通勤している(毎月の通勤手当が高額な)労働者がいる場合、変更に伴い支給される通勤手当が減少して標準報酬月額が2等級以上減少し、かつ減少した月から起算して連続する3か月において各月の報酬支払基礎日数(報酬を受ける日)が17日以上の場合、随時改定に伴い標準報酬月額が低下する可能性が考えられます。保険料は安くなりますが、保険給付や将来受け取る年金額に影響を及ぼすため、変更前に話し合って合意を取るべきと考えられます。


尚、通勤手当は労働の対償として支給される賃金のため各法律で賃金に該当するので、

  • 労働基準法(平均賃金)
  • 労働者災害補償保険法(給付基礎日額)
  • 雇用保険法(賃金日額)

にも影響があると考えられます。
これらの法律にも配慮し、変更前に話し合って合意を取るべきと考えられます。