離婚に伴う財産分与と退職金

著者:【弁護士】吉川 法生

※こちらの情報は2018年12月時点のものです

Q 相談内容

 このたび、妻と協議して離婚することになりました。現在、私は57歳で3年後の定年退職時、会社から退職金が支給されることになっています。
  離婚に伴う財産分与として、まだ支給されていない退職金もその対象になるのでしょうか。

A 回答

 民法は、「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる」と規定しています(第768条1項)。この財産分与は、離婚に伴い、婚姻期間中の夫婦財産を清算することなどが考慮の対象となります。
  そして、現在では、その清算の割合は、特別の事情のない限り、原則2分の1とされています。

 清算の対象となる財産ですが、多くは土地・建物などの不動産、預貯金、株式、保険金などでしょう。

 本件の退職金は、勤務先の退職金規定により支給され、労働の事後的対価と評価されていますので、給与と同様に配偶者により得られたものとして財産分与の対象とされています。

 当事者間の協議で財産分与の対象とする金額、支払時期などを決めることかできればそれでよいのですが、協議ができなかったり、まとまらない場合は、裁判所に決めてもらうことになります。

 そこで、裁判例をみていきます。
 退職金といっても既に支払いがなされた場合、本件のように将来に退職金が支給される場合とに分かれます。

既払の退職金

 既払の退職金は、すでに預貯金・不動産等さまざまな形の資産に変化していることが多いでしょう。この場合、現在の資産が清算の対象となります。

 配偶者の寄与は婚姻期間中となりますので、次の計算により、同居期間に按分した額を対象額として、原則2分の1の寄与が認められることが多いです。
 分与額=退職金額×同居期間/勤務期間

将来の退職金

 将来の退職金は、病気、事故、勤務先の経営状態の変化など不確定要素があり、支給されるかどうかが確実ではありません。しかし、賃金の後払的性格があること、老後の生活保障として重要であることなどから、支給の蓋然性が高い場合には、財産分与の対象になると考えられています。

 本件のように3年後の支給であれば、財産分与の対象となるでしょう。

 具体的な計算方法ですが、個別のケースに応じて裁判所の判断に委ねられており、その判断方法も多様です。実務では、現時点で退職したと仮定した場合の退職金額を算定し、同居期間に按分する額を清算対象とし、離婚時に支払う方法が最もよく採用されています。
 この他に、財産分与の考慮事情とする裁判例、将来の支給時を支払時期とする裁判例などがあります。