特許庁発表の統計情報について

著者:【弁理士】大上 寛

※こちらの情報は2018年2月時点のものです

 まだまだ寒い日が続きますが、ようやく春の兆しが見えてきました。今年のスタートダッシュはうまくいきましたか?
年度末ということでお忙しくされている会員様もいらっしゃると思いますが、ポケットプレスをご覧頂き、一休みしてくださいね。

 さて今回は、特許庁発表の統計情報についてご紹介させていただきます。

『特許行政年次報告書』とは?

 『企業や大学等が戦略的な知的財産管理を推し進め、技術経営力の強化を行う上で有用な情報を提供すべく、企業や大学等における知的財産の現状を把握するために必要な情報を収集・分析し、「特許行政年次報告書」として公表しています。』(特許庁)。

 具体的には、1年間の特許出願や商標登録出願の件数の件数や、出願人の国籍などを統計として公開しております。毎年報告書が公開されておりますので、推移もわかります。

最新の統計は?

  2017年版がインターネットで公開されております。
ご参考HP:特許庁
検索キーワード:特許行政年次報告書2017年版

https://www.jpo.go.jp/resources/report/nenji/2017/index.html
ページ数も多く、どこから見ていいか迷ってしまいますね(笑)。

  お勧めは、ダイジェスト版です。このダイジェスト版をみると、多くの人が知りたい情報があるので比較的とっつきやすいと思います。
検索キーワード:特許行政年次報告書ダイジェスト
https://www.jpo.go.jp/resources/report/nenji/2017/document/index/honpen0004.pdf

  さて、読者の皆さんは、年間何件の特許出願、商標登録出願がされていると思いますでしょうか?
予想できますか?

2016年の特許出願件数

2016年は、約31万件の特許出願がされました。

  約31万件!って多いですか少ないですか?いろいろな感想があるとおもいますが、実はこの出願件数、10年前の2007年では約39万件もありました!
数字の上では、2割近く減っていますので、いわゆる昔から比べると、『激減』といえるでしょう。

一般的には、従来は研究開発の成果の一つとして特許出願という選択をされていた企業が多くありましたが、コストの問題などもあり、ほんとに重要な技術だけを特許出願するという傾向があるといわれています。
以前は何でもかんでも特許出願していたので現在が適正値であるという声も聞かれます。

他方、コストの問題だけではなく、日本企業のイノベーション力が低下したなどと嘆く声も聞かれることがあります。
つまり、発明が生まれにくい環境になっているかもしれません。

国際特許出願は増えている?

 一方で、日本特許庁を受理官庁としたPCT国際特許出願の件数は、2016年では約4.4万件でした。10年前は約2.6万件でしたので、大幅に増加しているといえます。
 企業の外国での特許権の取得の意欲が高待っているということが数字に表れていると考えます。依然としてグローバル化が続いているといえるでしょう。

2016年の商標登録出願件数

  2016年は、約14万件の商標登録出願がされました。

  商標登録はなじみの多い会員様も多いと思います。商品やサービスの『顔』となるものでもありますから、常に新しい商標が生まれます。2011年ごろには10万件を切りましたが、ここ数年では、件数が増加傾向にあります。

商標は、ニュースになることが多いですね。『PPAP』や『フランク三浦』など大きな話題になったことは皆様の記憶にもあると考えます。

 商標権は先取り的な要素もありますので、他人に先を越される前にまずは出願をすることが重要です。

その他

 以上、ざっくりとした情報をご紹介いたしましたが、報告書には、例えば、都道府県ごとの統計、出願人の国籍の統計、審査に要した期間、外国の出願件数の情報、などなど、沢山のデータが形成されております。

まとめ

 いかがでしたでしょうか?
 知的財産に関する統計情報は、特に経営層の方々にも知っておいていただきたい情報であるとおもいます。データをより細かく見ていけば、技術のトレンドや、競合企業の分析などもすることが可能になりますので、まずは今回のような大まかな統計情報から興味を持っていただけるとよろしいと思います。