特許の早期審査について

著者:【弁理士】 大上 寛

※こちらの情報は2022年9月時点のものです

9月に入りすっかり本年の後半戦となりました。今年は“BIGBOSS”の影響を多大に受けて、にわかプロ野球ファンになりました(笑)。ペナントレース終盤ではどのようになっているでしょうか。若手選手が積極的に起用され、はつらつとプレーする姿は見ていてすがすがしいですね。わたしも弁理士業においてベテラン?の域に入ってきた気も致しますが、この世界は70代でも現役バリバリの先生もいらっしゃいますので、世代的にはまだまだ若手なのかもしれません(笑)。まあ、さすがに若手はないかもしれませんね(笑)。
さて、今回は特許の早期審査に関する話題です。

1.特許を取るには時間がかかる?

新商品の開発の際には、デザインは意匠出願、ネーミングは商標出願、技術は特許出願のことを思い出してください。
これらの出願をすることで、第三者の模倣を防止したり、模倣された場合の差し止め請求も可能となり、ビジネスを優位に進めることができます。
ただし、実際には権利を取得するまでには時間がかかります。
意匠・商標はおおよそ8か月~1年程度で初回の審査結果が出されます。
特許の場合はより長く、おおよそ1年~2年程度で初回の審査結果が出されます。
結構時間がかかるんです!
この審査結果を早く知りたい場合には、『早期審査』をリクエストし、リクエストが認められれば数か月で審査結果を得ることが可能となります。

2.特許の『早期審査』の対象になるための要件は?

いくつか要件はありますが、一番利用しやすいのが『2年以内の実施予定』を理由とするものです。
特許出願の明細書には、従来技術の文献名や、従来技術との比較をしっかりと記載し、2年以内に出願する発明を実施予定であることを説明することで、早期審査の対象となりえます。
例えば、3か月で一回目の審査結果が出されることもよくあり、早いものでは、出願をしてから4~5か月で特許を取れた!ということもあります。

3.『早期審査』の利用方法

早期審査をして特許になればいいですが、拒絶される場合もあります。そう簡単にはいきませんね。やっぱり出願しなければよかった!ということになるかもしれません。
その場合には、特許出願を取り下げることによって、出願をキャンセルすることができます。これにより、特許出願の内容を第三者に知られることなく、秘密にすることができます。
例えば、特許になるかならないか微妙な技術があったとします。出願したいけど公開されたら他社に秘密がばれてしまう…。ノウハウをタダで公開してしまう!ということはよくあります。特許出願は18か月後に自動的に公開されてしまうので、このような心配をすることになります。
この点、公開前に審査結果を得ることで取り下げてしまえば、『特許取得へのチャレンジ』と『チャレンジが失敗した場合のノウハウの公開防止』の両立を図ることができます。
18か月以内の短期決戦になりますが、このような利用方法もあります。

4.まとめ

いかがでしょうか?
早期審査により審査期間を短くすることで、結果を早く知ることができます。
一方で、早期審査にかけずに通常の期間を待つという対応もあります。白黒はっきりつけずに第三者を牽制することや、コストの見極めなど、様々な理由があります。
早期審査は、状況に応じてうまく利用したいですね。