商標権の更新登録申請について

著者:【弁理士】大上 寛

※こちらの情報は2018年4月時点のものです

 皆さんこんにちは! 弁理士の大上です。
皆さんのビジネスにおいて最も身近な知的財産といえば、やっぱり商標でしょうね。

 今回は弊所へのお問合せの多い商標権の更新登録申請についてお話させていただきます。

商標権は半永久的に権利を持ち続けることができます

 商標権は、10年ごと(又は5年ごと)に更新登録を申請することができます。

 例えば、今から10年前の2008年に登録された商標権があったとします。
この場合、今年の2018年に更新登録申請することで、さらに2028年まで権利を存続させることが可能となるのです。

 このように、商標権の権利は10年単位(又は5年単位)で更新することができるので、半永久的に存続する権利と言われております。

 また、外国においても同様の制度を有する国が多く存在します。従って、世界各国の商標権を取得後、更新手続きを繰り返すことで、世界各国において権利を存続させ続けることが可能なのです。

10年前に…

 さて、「10年一昔」などといわれますが、10年というのは結構長い期間であります。会社を立ち上げた頃に商標権を取得していたとすると、10年の間に色々な変化があります。

 一人で会社を立ち上げた際に、社長さんが自ら商標登録出願をして商標権を取得した場合もあるとおもいます。或いは、ご家族や知人にお願いして登録をお願いしたこともあるかもしれません。

 10年経過して会社も成長し、自分が商標権を取得したことさえも忘れてしまうこともあるでしょう。「あれ? いつ登録したっけ?」みたいな感じです。忘れてしまうくらいの成長も素晴しいですが、人気商標の商標権の管理が手薄だと、権利を消滅させてしまうなどのリスクもあります。

 また、商標の管理担当者を選任した場合でも、10年という長い期間ですから、途中、人事異動や、退職なども当然発生し、途中でうまく引継ぎがなされないことも大いに生じ得ます。

 なにせ10年に一回の手続ですから、仕方がないともいえますね…。

更新を忘れてしまった!という場合

 商標権の更新申請は、存続期間の満了日の半年前から行うことができます。
つまり、2018年12月31日が満了日(登録日は2008年12月31日)であれば、6カ月前の2018年6月30日から更新手続ができます。

 ここで、2018年12月31日を過ぎてしまったらどうなるでしょう?
「安心してください。更新できますよ」(笑)とにかく明るい感じで落ち着いてください。満了後であっても半年間は更新が可能です。

 ただし、通常必要な更新の印紙代(10年:38,800円(1区分))の倍額納付が必要になります。つまり、一区分であれば、満了前であれば、38,800円であったところ、77,600円が必要になってしまいます。区分が大きければ、より負担は大きくなります。

不要な商標の見なおし

 他方、既に使用していない登録商標も存在する場合も多くあるでしょう。
社長が突然思いついたネーミングを急いで出願をして権利を取ったが、結局一度も使用されず、誰も何も言えず、そのまま眠っている…ということもあるかもしれません(笑)。
このような場合には、思い切って更新をしないという判断もあるとよいとおもいます。

商標権のメリットを最大限に生かす

 商標権は「ブランド価値」「ブランド力」を保護するのに有効な手段です。
ただし、「ブランド価値」「ブランド力」は、短期間で容易に獲得できるものではなく、永年の企業努力が必要とされます。 商標権は「ブランド価値」「ブランド力」を保護するのに有効な手段です。

 一方で、ひとたび「ブランド価値」「ブランド力」を獲得することができれば、収益率の高いビジネスを展開することが可能になるため、商標権を更新して、権利を維持することは重要なことになります。商標権と企業活動はまさに「二人三脚」といえるでしょう。

 商標権の更新を忘れてしまうと、せっかく育てた商標が、見知らぬ第三者に権利として取られてしまうことにもなってしまいます。このような事態はゼッタイに避けたいですね。

商標権の更新の手続きは

 以上により、更新の申請手続の重要性について、ご理解をいただけたと思います。

 更新手続は商標権者自身(自社)でも行うことは可能ですが、担当者がいない場合には、弁理士(特許事務所)にお願いすることが、期限管理の面も含めて有効です。