【Q&A】残業代の返還について
※こちらの情報は、2024年7月時点のものです
Q.相談内容
残業中、仕事をしているように見せかけて実際はインターネットで業務とは無関係の動画などを見ていた従業員がいます。本人へ問いただしたところ、過去3年間にわたり同様の方法で残業のかさ増しをしていたようで、延べ約300時間分の残業代を不正受給していたことが判明しました。この場合、懲戒処分とは別に残業代を返還させることは可能でしょうか。
A.回答
本来支給されるべきでない賃金が支給された場合の取戻しは、不当利得返還請求権が根拠となります。不当利得返還請求の消滅時効は、権利を行使することができる時から10年間、権利を行使することができることを知った時から5年間とされていますから、消滅時効についてはいまだ成立していないと考えられます。
次に残業中に仕事をしているように見せかけてインターネット動画等を見ていたことが、時間外割増賃金を本来支給する必要のない場合といえるかが問題となります。
労働者は、労働契約上の債務として使用者の指揮命令に基づいて労務を提供すべき義務を負っています。また、労働契約に付随する義務として、勤務時間において職務上の注意力のすべてを職務遂行のために用い、職務にのみ従事しなければならないとする職務専念義務を負っていると解されています。
ご質問のケースのように残業時間として勤務していた時間において、インターネットで業務とは無関係の動画などを見ていたということであれば、職務専念義務違反として労働契約上の債務不履行となります。
一方で、当該労働者に対して支払われた時間外割増賃金が本来支給する必要のない賃金といえるかについては、さらに慎重に検討する必要があります。
労働基準法の時間外割増賃金については、法定時間外に同法の定める労働時間が存在する場合に支払い義務が発生しますから、使用者が労働者に対して賃金の返還を求める場合には、特定の時間が同法の定める労働時間に該当していないことを主張・立証する必要があります。
労働基準法上の労働時間とは労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいいます。労働者が完全に労働から解放されている休憩時間は労働時間に当たりませんが、現に作業中ではないものの、指示があればすぐに従事できるように待機している、いわゆる手持ち時間については労働時間に該当します。
したがいまして、今回のケースにおいて賃金の返還を求める場合には、特定の時間において、当該労働者が完全に労働から解放されていたことを使用者が主張・立証しなければならないということになります。
なお、残業中に業務と無関係の動画などを見ていたことは職務専念義務違反に該当しますので、懲戒処分をすることは可能です。減給の懲戒については、上限額についての規制があるほか、どの時点の非違行為までさかのぼって懲戒の対象とし得るか、懲戒処分の個数としてどこまで細分化するべきかについて慎重に検討する必要があります。

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