借地上の建物の譲渡と相続

著者:【弁護士】吉川 法生

※こちらの情報は2024年9月時点のものです

Q.

私は40年前、土地を借りてその上に建物を建てて、以降、住んできました。高齢になったこともあり、今般、この建物を売って、マンションに移ることを考えています。このことを地主さんに話したら、承諾料を支払うよう求められました。この承諾料は支払わないといけないものでしょうか。
これが建物の売買ではなく、相続の場合はどうなるのでしょうか。

A.

賃貸借契約は継続的な関係が前提となりますので、賃貸人・賃借人の信頼関係が基礎となっています。そして、借地上の建物を売買などで譲渡する場合、建物とともに底地の借地権も併せて譲渡されるものと考えられています。こうしたこともあり、民法では、賃借人は賃貸人の承諾を得なければ賃借権を譲渡することができないとされています(612条1項)。したがいまして、賃貸人である地主に無断で建物を売却すると、借地契約が解除される危険性があります

このように、建物を売却するに際しては、地主に相談して承諾をもらう必要があります。この承諾については、質問にあるように承諾料を支払うことが一般的です。その金額は、当事者間の協議で決定されます。

では、地主が譲渡を承諾してくれない場合、また、承諾料が決まらない場合は、どうしたらよいでしょうか
この点については、借地借家法で、借地権者が土地上の建物を第三者に譲渡しようとする場合、建物を譲渡しても地主に不利となるおそれがないにもかかわらず、地主がその譲渡を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、地主の承諾に代わる許可を与えることができると定められています。さらに続けて、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡を条件とする借地条件の変更を命じ、またはその許可を財産上の給付に係らしめることができると規定されています(19条1項)。この財産上の給付が、いわゆる承諾料や名義書換料といわれているものです。
そして、裁判所がこの裁判をするには、賃借権の存続期間、借地に関する従前の経過、賃借権の譲渡を必要とする事情その他一切の事情を考慮しなければならないとされています(同条2項)。
承諾料につきましては、個別の事情が考慮されることになりますが、一般的には借地権の1割程度とされることが多いようです。なお、この裁判所に承諾に代わる許可を求める申立ては、第三者に売却する前にする必要があります。

他方、借地権が相続される場合、地主の承諾は不要です。これは、相続が被相続人の権利義務はそのまま相続人に承継されるという性格を有しているからです。実際は、相続人の間で遺産分割協議等がなされることになりますが、その結果、建物を相続した者は相続時にさかのぼって借地人としての効力が生じることになります。

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