残業許可制について

著者:【社会保険労務士】野田 学

※こちらの情報は2023年7月時点のものです

これまで大企業のみ月60時間を超える時間外労働割増賃金率が50%となっていましたが、2023年4月より中小企業においても大企業と同様に、25%から50%に引き上げることになりました。この改正の主旨は、長時間にわたり労働する労働者の割合が高くなっており、「こうした働き方に対し、労働者が健康を保持しながら労働以外の生活のための時間を確保して働くことができるような労働環境を整備することが重要な課題となっている」という点にあります(ワークライフバランス)。そこで、各企業は再度自社の労働時間の現状を確認し、必要に応じて労働時間削減に向けた取組を実践していく必要があります。今回は、労働時間削減に向けた代表的な取り組みの一つとして、「残業許可制」について解説致します

残業を減らすことのメリット

企業にとって残業代を削減できることが最大のメリットですが、他にも次のようなメリットがあると考えられます。

  • 長時間労働による過労死・労災リスク・メンタルヘルスへの負担を減らすことができる。企業は労働者に対して安全配慮義務を負っており、長時間労働を抑制することで労働者の健康を保持することができる。
  • 業務の効率化を進めることで、企業の生産性の向上につながる。
  • 従業員の会社に対する帰属意識の向上、離職率の低下が期待できる。
  • 通信費や水道光熱費の経費削減となる。

残業許可制とは

残業が多くなる原因は様々ありますが、原因の一つとして従業員が緊急性・必要性が乏しい業務にもかかわらず残業となっているケースが考えられます。こうした残業を防ぐ対策として、残業を許可制にする方法があります。残業をする場合は、事前に所属長等の承認を得ることをルール化し、本当に残業しなければならない業務なのか事前に所属長が確認し、不要な業務であれば残業をさせないようにします

導入の仕方・運用方法

残業を行うには所属長の許可を得る必要があること、無許可の残業は残業代が支払われないことを就業規則に規定しておきます。残業申請の際は、残業申請書のような社内様式を事前に所属長に提出させることをルール化し、どのような理由(業務内容)でどの程度残業をするのか(予定時間)を申請してもらいます。承認する側も、どのような場合に残業申請を認めるのか、あらかじめ承認基準を定めておきます。このような判断を適切に行うためには、所属長が日常的に従業員の業務量や仕事の進め方、抱えている業務の締め切りの期間等について適切に把握しておくことが必要です。残業許可制の目的が単純な残業代削減にならないようにルールとして明確にしておく必要があります

残業許可制にもかかわらず、無許可で行った残業に対し、割増賃金を支払う必要はあるのか

現実的には、残業許可制を導入している企業でも、労働者が許可を得ずに自主的に残業していることがあり得ます。労働基準法上の労働時間とは「使用者の明示または黙示の指示により労働者が業務に従事する時間」とされています。このような許可制においても、黙示の時間外労働命令があるといえる場合には、形式的に事前許可がないからといって割増賃金の支払いを免れることはできないと考えられますので、運用にはご注意ください。黙示の指示とは、労働時間内で終わらないような大量の業務を命じた場合や、残業していることを知りながら、会社側が黙認していたような場合が該当すると考えられます。黙示の残業命令があるとみられることを防ぐためには、残業許可制が導入されていることや実際に残業する際の手続きについてきちんと従業員に周知して置く必要があります。それでも許可制を守らず残業する従業員に対しては、会社として必ず注意し、帰宅を指示するなどの対策が必要です。さらに、何度注意しても態度を改めない従業員に対しては、きちんと許可をとって必要な残業を行うよう、個別に面談を行うことも効果的です。また、残業を指示し承認する役割である所属長に対しても教育周知を徹底し、厳格な運用が求められます。

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