整理解雇の有効性

※こちらの情報は2025年1月時点のものです
経営不振の打開策として、経営の合理化、事業縮小など、使用者側の一方的な理由による余剰人員削減の為の解雇を「整理解雇」と言います。
労働者に帰責性(責任)がない為、その解雇の有効性は、裁判等において厳格に判断される事となります。
整理解雇を適法に行うには、労働者を解雇する最後の手段として許されるべき社会通念上のレベルに到達している必要があり、原則、過去の裁判例から確立された4つの要件を満たす必要があります。
1.人員整理の必要性
人員整理の必要性は企業経営に関する部分であり、使用者の判断が尊重される傾向にあります。
※経営不振を打開する為、人員整理しなければ倒産する程までの状況は不要で、企業の合理的運営上の必要性があれば認められやすい項目となります。単に売上を向上させる為などの理由では合理性に欠けます。
※整理解雇を経営上の必要性で行う場合、財務諸表等で説明できる状態にしておきましょう。
2.解雇回避努力義務の履行
- 経費削減(労働時間の削減、基本給減少、ボーナス、定期昇給の停止、広告費・交通費・交際費などの削減)
- 新規採用の中止
- 一時帰休(経営悪化を理由に、業務量を減らして一時的に休業させる事)
- 退職勧奨(労働者に自主的な退職を促す行為)
- 出向、配置転換、転籍
- 希望退職者の募集
- 役員報酬のカット など
解雇を回避する為に様々な努力を尽くしている事が判断基準となります。可能であるにも関わらず、講じていない解雇回避措置がある場合、その合理的理由が求められます。
※希望退職者募集は有能な人材の流出等の観点もあり、絶対的な項目ではありません。
※配置転換、出向に関して、勤務地、職種を限定して採用した従業員でも、本人の希望があり、配置転換や出向が可能であれば、雇用確保に努める義務を負います。従業員に対して他のポジションの案内や配転、出向の具体的提案などを行ったかがポイントになります。
※コロナ禍において、休業時に申請条件を満たしていた雇用調整助成金を利用せずに整理解雇した事例で、解雇回避措置の相当性が低いとし、整理解雇無効とした裁判例があります。
※正社員を対象とする解雇に先立ち、非正規社員の雇止めを行う事は正社員と比べると要保護性が低い為、認められる可能性が高いですが、複数年雇用契約が更新されている場合や契約期間中に更新を期待させる言動が会社側にあった場合など、従業員にとって継続的に雇用されることが客観的に期待できる事情があるときは、契約期間の満了を理由とする雇い止めが無効となる可能性があります。(雇止めの法理)
※会社が解雇回避努力を行ったが、従業員側が真摯に対応しなかったケースでは、整理解雇要件の総合判断で有効とされた裁判例もあります。
※解雇回避努力義務の履行は、会社側の対応が細かく検証されることが多いので特に重要な項目です。
3.被解雇者選定の合理性
事案によって異なりますが、通常は人選基準が評価者の主観に影響されておらず、合理的かつ公平である必要があります。基準を設定しないで行われた整理解雇や裁判所が客観的で合理的ではないと判断した基準による整理解雇は、無効と判断される可能性が高いと言えます。
人選基準は、勤務成績や勤続年数、経済的打撃の程度の少ない者などを基準とすることが一般的です。
※勤務態度、協調性、作業効率などを選定基準とする場合、人事考課されている事実が求められます。人事考課を行っていない場合は、選定までに十分な調査を行うなどがない限り、合理的な基準とされない可能性があります。
※年齢を基準として選定基準とする場合、定年60歳の会社で53歳以上を選定したケースでは、早期退職の代償措置や再就職の支援なしに選定基準とする事は、被用者及びその家族の生活に配慮を欠くとし、合理的な選定基準ではないとした裁判例があります。
4.解雇手続きの妥当性
解雇の対象者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者と十分に協議し、整理解雇について納得を得る為の努力を尽くしている事が求められます。
従業員又は労働組合に対して、整理解雇の必要性、時期、規模、方法、その他解雇回避措置の内容、選定基準の説明、退職金上積み、再就職のあっせんなどについて納得を得る説明を行い、対象者と誠意をもって協議すべき信義則上(私的関係において、相互に相手方を信頼し、誠実に行動し、裏切らないようにするべき原則)の義務を負います。
※労働組合未加入者、少数派組合員が整理解雇の対象になっている場合は、組合未加入者、少数派組合に対して、協議、説明を行う必要があります。
※整理解雇の決定から実施までの期間が会社都合の短期間である場合などは、解雇手続きの妥当性は否定される可能性が高くなります。
解雇手続きの実施(解雇予告通知・解雇予告手当)
整理解雇も解雇手続き一般に必要とされる手続きを行う必要があります。原則、30日以上前に解雇日を予告する必要があり、予告をしないで直ちに(即日)解雇をする場合には、解雇予告手当として30日分以上の平均賃金を支払う必要があります。
※法人解散(事業廃止)に伴う解雇は4要件の適用は原則なですが、他に事業譲渡(仮装解散)するようなケースには適用があります。
近年の整理解雇の裁判例は前記の4つの基準を要件とする(要件が1つでも欠ければ解雇無効)のではなく、総合判断としての要素とし、前記の基準を中心にその他の諸事情を総合的に考慮して判断するものが多いですが、特に解雇回避努力義務の履行及び被解雇者選定の合理性については、厳格に判断されています。
整理解雇を行うには、普通解雇・懲戒解雇と異なり、就業規則等への要件記載は不要ですが、普通解雇については、労働基準法第89条により、就業規則の作成義務のある会社の場合には必ず解雇事由の規定が必要です。
就業規則作成義務のない会社では、民法627条【期間の定めのない雇用の解約申し入れ】により、使用者の解雇権までは否定はされませんが、解雇権濫用と判断される可能性は残りますので、やはり、就業規則を整備し、その基準(解雇事由)を明確に示しておく事は重要です。同様に、従業員に懲戒処分を行うには、予め就業規則に規定(懲戒事由)を設けておく必要があり、就業規則に定めのない懲戒処分を行う事は違法となります。
就業規則作成義務のない従業員10人未満の会社でも懲戒処分を行う為には、就業規則を作成して懲戒処分規定を定める必要がある事にも注意が必要です。
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