「終活」の前の「老活」のすすめ

著者:【谷野会計事務所】谷野 芳江

※こちらの情報は2019年2月時点のものです

 定年後の65〜75歳くらいの期間は、誰に気兼ねすることなく元気で好きなことができる、人生の何度目かの黄金期間といえます。そのときのために準備することを、最近「老活」と呼んでいます。

 これとは別に、よく聞かされる「終活」は、人生の最期を迎えるときに、体の自由がきかなくなったり、自分で判断することが難しくなったりする可能性に備えて、元気なうちに身辺整理をしたり、後に残される人に手紙を書いたり、医療・介護・葬儀・相続などについての希望を書面で準備したりすることを言います。書店にはそのためのエンディングノートなど多くの書籍類が販売されています。

 このような終活はもちろん大事な準備ではありますが、元気なうちに楽しいことを考える「老活」も充実した人生のために大切なことです。

 定年を迎えた後から人生の締めくくりまで、やりたかったことを実現していく、大きな夢、小さな夢をかなえるための準備、それが「老活」です。人生経験を生かした起業、ボランティア活動、習い事、旅行等々、様々なことを考えるとウキウキしてきませんか?

 他方で、年金だけで生活することに不安を感じ、できるだけお金を使わずに貯蓄し、定年後も働き続ける方が多いことも現実です。「老活」するためには、どんなことから始めたらいいのでしょうか?それには、まず老後資金と健康管理、そして趣味について準備することが欠かせません。

老後資金

 今や誰もが社会保障に不安を持っています。国任せでは先行きが見通せません。

 国民年金、厚生年金に入っていて、満額受け取れた場合を想定しても、充実した老後を過ごすためにはなお3000万円程度が不足するという試算があります。40代から貯蓄を始めても、20年間毎年150万円の貯金が必要になるという計算です。ですが、子どもが社会人になるまでは、貯蓄は難しいという人が大半でしょう。3000万円を準備することは容易ではありません。

 会社の経営計画も同じですが、お金を準備するためには、収入を増やすことと、支出を減らすことの2つを実践していくことになります。

収入の増やし方
  • 資産運用に関する知識の習得がまず必要ですが、何よりリスクの少ない投資を心掛けます。信用のおけるフィナンシャルプランナーに相談することも必要です。
  • 副業の開始
    働き方改革が進み、副業を持つことが可能となった企業も増えています。趣味と実益を兼ねた副業は魅力的ですが、本業に差しさわりがあってはいけません。堅実な計画が必要です。国家資格が必要な士業などは、定年退職後に本業へ転換できる可能性もありますので、安定して収入を確保するための実践的な方法の一つになります。
支出の減らし方
  • 複式簿記による家計管理を行う
    複式簿記とは、主に会社・法人などの「企業会計」の取引記録に使われる帳簿記入方法です。家計の財政状態が一目でわかるようになり、削減対象となる支出が見つけやすくなるだけでなく、長期の収支計画を立てやすくなります。市販の会計ソフトを使えばそれほど難しくないのでぜひ実践してみてください。
  • 生命保険や医療保険の見直し
    不必要な保険や重複した保険、保険料が割高な保険をチェックし、整理します。

健康管理

 老後に健康的な毎日を過ごすためには、筋力を維持することが必要不可欠です。しかし、運動の苦手な方は明日から始めようと先延ばしにすることも多く、結局ケガや病気により運動を諦めてしまう場合もあります。定年前から、運動する習慣を身につけて、健康診断を受けたり、食生活にも気をつけたりしながら日常生活を送るようにしたいものです。

趣味探し

 老後を楽しく過ごすためには、楽しめる趣味を見つけることがとても大切です。趣味を通じた人との交流は、認知症予防にも大きな効果を発揮します。何より毎日の生活に張りを与えてくれ、健康的な生活が可能になります。また、趣味や社会活動などを通じて他の人とのコミュニケーションを保つことは、孤立を避け、自分の健康状態を常に客観的に評価することにもつながるのではないでしょうか?

 人生100年時代と言われます。「老活」はこの時からがスタートという明確な始め時はありません。年を重ねていく中で、徐々にライフスタイルを変えていき、充実した第二の人生を送るのが理想です。
 一度きりの人生をより楽しく、より良いものにするために、ぜひこれからの自分の過ごし方を考えてみてください。