学生アルバイトを雇用する際の留意点

【社会保険労務士】畑田 英一

※こちらの情報は2019年5月時点のものです

 新年度も始まり新たに学生アルバイトの採用をお考えの企業様、既に採用されている企業様も多くいらっしゃることと思います。
 厚生労働省では、昨年に引き続き全国の大学生等を対象として、特に多くの新入学生がアルバイトを始める4月から7月までの間、自らの労働条件の確認を促すことなどを目的として「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーンを実施しております。

 そこで、今回は、学生アルバイトを雇用する際、特に気をつけていただきたい事項をご紹介します。

重点的に確認を呼びかけている事項5点

  1. 労働条件の明示
  2. 学業とアルバイトが両立できるよう適切な勤務シフトの設定
  3. 労働時間の適正な把握
  4. 商品の強制的な購入の抑止とその代金の賃金からの控除の禁止
  5. 労働契約の不履行に対してあらかじめ罰金額を定めることや労働基準法に違反する減給制裁の禁止

重点事項5点の詳細について

1.労働条件の明示

 学生アルバイトであっても、会社から労働条件通知書などの書面を交付し、労働条件をしっかり明示する必要があります。

次の6項目については必ず書面で明示しなければなりません。なお、労働者が希望した場合には、メール、FAX等(印刷できるもの)による明示も可能です。

  1. 労働契約の期間
  2. 契約期間の定めがある場合、更新があるか、更新する場合の判断基準
  3. 就業する場所、仕事の内容
  4. 始業・終業の時刻、残業の有無、休憩時間、休日・休暇、交替制勤務のローテーションなど
  5. バイト代(賃金)の決め方、計算と支払いの方法、支払日
    ※バイト代などの賃金は都道府県ごとに「最低賃金」が定められており、これを下回ることはできません。また、高校生アルバイトや雇入れ後の研修期間中も、最低賃金額以上の賃金を支払う必要があります。
  6. 退職・解雇に関すること

 また、パートタイム労働者への明示が必要な下記の4点も学生アルバイトを雇用する場合も当てはまりますのであわせてご注意ください。

  • 昇給の有無
  • 退職手当の有無
  • 賞与の有無
  • 相談窓口
2.適切な勤務シフトの設定

 学業とアルバイトが適切な形で両立できる環境を整えるよう配慮する必要があります。
 また、採用時に合意したシフトの変更などの労働契約の内容の変更については、労働契約法第8条により労働者と使用者の合意が必要であり、使用者が一方的に急なシフト変更を命じることはできません。

3.労働時間の適正な把握

 労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、適正に記録する必要があります。
 就業を命じられた業務に必要な準備や片付けの時間、参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練を受講していた時間も労働時間となります。
 また、原則として労働時間の端数は1分でも切り捨てることはできません。

 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドラインの対応は通常通り求められています。

4.商品の強制的な購入の抑止とその代金の賃金からの控除の禁止

 本人が希望していないのに、商品を強制的に購入させることはできません。また、本人が希望して商品を購入した場合でも、賃金から商品代金を差し引く場合は労使協定が必要です。

5.労働契約の不履行に対してあらかじめ罰金額を定めることや労働基準法に違反する減給制裁の禁止

 アルバイトの遅刻や欠勤などに対して、あらかじめ損害賠償額等を定めることはできません。

 遅刻を繰り返すなどの規律違反をしたことへの制裁として、就業規則に基づいて、本来受けるべき賃金の一部を減額する場合であっても無制限に減給することはできません。
 1回の減給金額は平均賃金の1日分の半額を超えてはなりません。

 また、複数にわたって規律違反をしたとしても、減給の総額が一賃金支払期における金額(月給制なら月給の金額)の10分の1以下でなくてはなりません。
 制裁の定めをする場合は、その種類及び程度を就業規則に記載しなければなりません。

その他おさえておきたいポイント

1.残業手当

 法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えて労働させた場合の割増賃金(残業手当)を適切に支払う必要があります。

2.年次有給休暇

 週1日以上または年間48日以上の勤務で、雇われた日から6カ月以上継続勤務し、決められた労働日数の8割以上出勤の条件を満たしたとき、1日以上の年次有給休暇が付与されます(下表参照)。

 「学生アルバイト」だからという理由で、労働基準法等の違反がないようにご留意ください。