定期健康診断について

著者:【社会保険労務士】平良 顕治

※こちらの情報は2019年11月時点のものです

健康診断には「雇入時の健康診断」、「定期健康診断」、「特定業務従事者の定期健康診断」など色々ありますが、今回は身近な「定期健康診断」について取り上げます。

定期健康診断は、事業者の義務

定期健康診断を実施することは事業者の義務となっております。また実施するだけではなく定期健康診断結果の通知と結果の保管(5年間)が義務付けられております。

時々、事業主様より「定期健康診断は何名からなの」とか「小さい会社は義務ではないよね」などのご質問を受けることがあります。

定期健康診断は労働安全衛生法66条により、労働者の数に関わらず1名でも定期健康診断の対象となる労働者を雇用している事業者には実施の義務があります。

実施義務のある事業者が定期健康診断を実施しなかった場合は、罰則(50万円以下の罰金)が適用されますので注意が必要です。

定期健康診断の対象となる労働者は

労働者の雇用形態は正社員として1日8時間、1週間40時間勤務やパートタイマーとして1日5時間、1週間20時間勤務など、働き方は様々だと思います。

厚生労働省によると、定期健康診断の対象者は

  • 正社員(通常の労働者)
  • パートタイマー等で無期労働契約または契約期間が1年以上の有期契約(契約更新により1年以上になる場合を含む)の者で、1週間の所定労働時間が正社員(通常の労働者)の4分の3以上ある労働者

となっております。

例えば、正社員の1週間の所定労働時間が40時間の事業所で、契約期間が1年以上で1週間の所定労働時間が30時間と20時間のパートタイマーを雇用していた場合、定期健康診断の対象となるのは1週間30時間の者となります。

20時間の者には実施義務はありませんが、厚生労働省によると週所定労働時間が正社員の2分の1以上4分の3未満の労働者についても、実施することが望ましいとされています。

定期健康診断の結果に異常の所見があった場合は

定期健康診断に異常の所見があった労働者については、当該労働者の健康を保持する為に必要な措置について医師(産業医等)の意見を聴かなければなりません。

また、事業者は医師の意見を勘案して、必要があると認めるときは、就業場所の変更や、作業転換、労働時間短縮などの措置を講じなければなりません。

産業医の選任義務の無い事業所については、地域産業保健センターにご相談されるのも良いと思います。

定期健康診断結果の届出は

50名以上の労働者を雇用している事業者は健康診断実施後は遅滞無く、所轄の労働基準監督署への「定期健康診断結果報告書」の提出が必要になります。

定期健康診断実施の意義

前述のとおり定期健康診断は法令で義務とされており。罰則(50万円以下の罰金)も適用され、法令順守の観点からも必ず実施しなければなりません。しかし、法令順守だけではなく、事業者には労働者の健康管理と安全配慮義務があるとされております。

安全配慮義務については、労働者の安全と健康を保持するために、事業者が必要な措置と配慮を行っているかが問題となります。

定期健康診断はその最低基準であり、労働者に健康上の問題が発覚した場合、定期健康診断が実施されていなければ、安全配慮義務違反とみなされる可能性があると考えられます。

また、昨今の人手不足の中、定期健康診断は休職者を出さない予防策として、事業所を守る施策の一つと考えられます。