動画サイトにおける楽曲の利用について

著者:【弁理士】坂根 剛

※こちらの情報は2021年8月時点のものです

最近の子供達の憧れの職業として、YouTuberが上位にランキングされています。私の子供の頃はそもそもインターネットが存在しなかったため、YouTuberなど想像すらできなかった職業です。時代、技術の移り変わりの速さには驚かされます。さて、YouTuberに限らず、動画サイトに動画をアップするユーザにとって、著作権に関する対処は重要です。今回は、その中でも動画サイトにおける楽曲の利用について説明します

自らの演奏動画の投稿

ミュージシャンの楽曲をギターを弾きながら歌唱するなど、ユーザ自身が演奏、歌唱してYouTubeに動画を投稿する場合があります。このような投稿は、多くの場合、著作権の侵害にはなりません。これは、YouTubeがJASRACと包括的な契約を結び、著作権料を支払っているからです。前回までも何度か登場したJASRAC……そうですね。JASRACは、日本国内の作詞者、作曲者、音楽出版社などの権利者から委託を受けて著作権を管理している団体です。YouTubeに動画を配信するユーザがそれぞれ個別に著作権者から楽曲の利用許諾を受けるのは煩雑です。そこで、YouTubeとJASRACとが契約することで、ユーザの利便性が図られています。ただし、JASRACで管理されていない楽曲に対して動画配信した場合には、著作権侵害となります。個々の楽曲がJASRACで管理されているか否かは、JASRACのWEBサイトで確認することができます。また、YouTubeだけでなく、ニコニコ動画、Facebook、InstagramなどのサイトもJASRACとの契約を結んでいます。自分が投稿する動画サイトがJASRACとの契約を結んでいるか否かについても、JASRACのWEBサイトで確認できます。今回は、著作権管理団体=JASRACとして説明をしていますが、現在はJASRAC以外にもエイベックスが運営するNexToneという著作権管理団体もあります。JASRACと同様、NexToneもYoutubeと包括契約を結んでいます。

原盤をBGMとして使用した動画の投稿

原盤(CDなどの媒体)に録音された音源をBGMとして使用した動画をYouTubeに投稿する行為はどうでしょうか?残念ながらこの行為を著作権者に無断で行うと著作権侵害となります。JASRACは、楽曲の詞・メロディーに関する著作権を管理していますが、CDなどの原盤に録音された音源に対する権利は管理していません。原盤権は、レコード会社などの音源制作者が保有する権利であり、著作隣接権と呼ばれます。したがって、原盤に録音された音源をBGMとして使用した動画を投稿するためには、別途ライセンスの契約が必要となります。

フリー素材

ミュージシャンの演奏による音源をBGMとして使用することが難しいため、BGMについては別の方法を検討することが現実的です。1つの方法としては、無料で使用できるフリーの楽曲素材をBGMとして使用することです。YouTubeであれば、YouTubeオーディオライブラリによりBGM・効果音のフリー素材を利用することができます。あるいは、著作権の存続期間の切れた昔の楽曲などは、もちろんBGMとして利用可能です

まとめ

動画投稿の際、流行りのヒット曲をBGMとして利用したいと考えるユーザは多いでしょう。しかし、ミュージシャンの楽曲を使用するときは常に著作権の扱いに注意しなければなりません。著作権を侵害する動画を投稿した場合、動画が削除されるだけでなく、アカウントが削除される場合もあります。動画サイトには著作権法に違反する動画が放置されている場合もあります。他のユーザが投稿しているから大丈夫だろうと判断するのは危険です!