複製権と翻案権について

著者:【弁理士】坂根 剛

※こちらの情報は2022年10月時点のものです

20年前と比べて、最近では、著作権に関するトラブル、裁判などのニュースをよく目にするようになりました。個人の商店が著作権侵害で訴えられるといったケースは以前ではあまり考えられませんでした。著作権法が改正により整備されてきたこともありますが、著作権者が権利を主張することが多くなってきたことが大きな要因だと思われます。未然にトラブルを回避するためにも、企業、団体だけでなく、一般の人も著作権について最低限の知識を持つ必要があります。今回は、著作権の中でも重要な複製権と翻案権について説明します。

複製権

複製権は、著作権の中でも最も代表的な権利です。著作権法第21条には、「著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。」と規定されています。また、同第2条第1項第15号には、複製は、「印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することをいい…(以下略)」と、規定されています。コピー機を用いて複写することはもちろん、手で書き写すことも複製に含まれます。著作権がcopy rightと呼ばれていることからも、複製権が著作権の中心にあることが分かります。

翻案権

翻案権は、同第27条において、「著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。」と規定されています。複製は、著作物をそのまま利用する(まさにコピーする)ことを言いますが、翻案とは、著作物を用いて新たな著作物を創作することを言います。著作物を翻案することにより創作された著作物は2次的著作物と呼ばれます(同第2条第1項第11号)。
トム・クルーズ主演の「トップガン マーヴェリック」が大ヒットしていますが、1986年の1作目のトップガンの原案の著作者である記者が、パラマウントピクチャーズ相手の訴訟を起こしています。ここで問題となっている著作権が翻案権です。本作は原案の記事のコピーではないですが、本作の製作が、その記事を映画化するという翻案にあたるかどうかが争点の1つとなっています。

著作権侵害を防ぐために

新しい会社を作り、ビジネスを始める、会社のWEBサイトや広告媒体を作成する、個人でYouTubeで配信を始める、こういったとき、他人の著作物の複製権、翻案権を侵害していないかどうか注意する必要があります。音楽を使用する、映像を使用する、デザインを使用する、文章を使用する、これら全ての行為について注意が必要です。他人の著作物である映像やデザインをそのまま利用すれば複製権の侵害となります。そのままコピーはダメだから、ちょっと色や形を変えて利用してしまえっ!という行為をすると、翻案権の侵害となります。一番安全なのは、全てオリジナルの著作物を利用することですが、なかなか大変なことです。著作権フリーの素材などを利用する方法もあります。音楽であればJASRACに使用料を支払うことで、登録された著作物を利用できます。