【Q&A】退職と年次有給休暇

※こちらの情報は2022年1月時点のものです

Q.相談内容

従業員が退職するときの年次有給休暇の取扱いについて教えてください。

A.回答

原則として労働者が希望した時季に与えなければなりません。また、退職時の引継ぎについても配慮すべきと考えられます。

1.年度途中で退職予定の者には、在籍月数で按分した日数付与でもよいか。

按分付与をすることはできません。例えば、4月1日に20日分の年次有給休暇(以下「年休」)の権利を付与すべき者が、6月末に退職予定である場合、3か月分に相当する5日分のみ付与すればよいと考える方もいらっしゃいますが、それは違法となります。退職予定であっても、法定通りの日数(この例では20日分)を権利として付与しなければなりません

2.年休の買い上げは可能か。

原則として買い上げは禁止されています。つまり、金銭を支給するだけでは足りず、現実に休ませなければなりません。ただし、以下の場合には、年休の買い上げが認められています。

  • 退職により未消化の年休
  • 2年間の時効消滅により未消化の年休

3.退職日までに残余年休の全てを請求された場合に、拒むことはできるか。

拒むことはできません。まず、年休は、労働者が希望し請求する時季に与えなければならないという「時季指定権」があります。それに対し、請求された時季に年休を付与することが事業の正常な運営を妨げる場合に、使用者が労働者に対して取得時季の変更を求めることができる「時季変更権」があります。ただし、退職日を超えての時季変更は行えません。そのため、退職日まで期間的余裕がなくて、業務引継ぎが充分に行われずに、事業に重大な支障を生じさせるものであったとしても、請求された時季に年休を取得させなければなりません。

4.年休消化により業務引継ぎが充分でない者へ、懲戒や退職金不支給処分を行えるか。

話し合い等により、労働者本人の任意に基づく限りは、以下の対応を取ることができます。

  • 引継ぎに必要な日数分、退職日を遅らせる
  • 引継ぎに必要な日数分、年休を買い上げる

上記対応が難しく引継ぎが充分でない場合、就業規則の規定に基づき、懲戒処分の対象とする事も考えられます。また、懲戒処分を行う期間的余裕がない場合であっても、退職金不支給処分は一般的に困難とされます。退職金は在籍中の功労に対して支給されるべきものであり、その功労を抹消するほどの違法・不法性のある行為に対しては不支給処分も有効とも考えられています。なお、牽制目的で就業規則に退職金不支給処分の規定をする事は可能です。その他、民法(退職通告から2週間経過で使用者の承諾なく退職可能)に配慮した上で、期間的余裕を持った退職届提出期限を任意に設定する事も有効な対応策といえます。

【参考URL | 東京労働ホームページ】
しっかりマスター労働基準法-有給休暇編- | パンフレット
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/content/contents/000501862.pdf