「常時使用する労働者」とは

著者:【社会保険労務士】薄井 大助

※こちらの情報は2022年2月時点のものです

法令の中には「常時使用(雇用)する労働者」の数により事業主に課される義務や、適用を受ける労働者の範囲等を定めているものがあります。しかし法令によりその定義が異なる場合もありますので、今回は具体例をもってご説明します。

労働基準法・労働安全衛生法:事業規模の判断

この法令の事業規模の判断における「常時使用する労働者」とは、通常の事業運営を行っていく為に雇用している労働者を指し、正社員以外の有期契約社員や日雇い、短時間労働者(パート・アルバイト)も含まれます。一方、繁忙期等に一時的に雇用される方は、常時使用に含まれません。この事業規模により、次のような義務が発生します。

  • 就業規則の作成・届出義務(常時10人以上)
  • 安全衛生管理体制の整備(常時50人以上の場合は衛生管理者の選任が必要 等)

労働安全衛生法:定期健康診断の対象労働者

この場合の「常時使用する労働者」は事業規模の場合と異なり、次のいずれも満たす方を指します。

  • 契約期間の定めがない、期間の定めがある場合は1年以上の雇用見込み又は更新により1年以上使用されている
  • 1週間の労働時間数がその事業場の同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の3/4以上である(1/2以上である方に対しても実施する事が望ましい)

社会保険(健康保険法・厚生年金保険法)

この法令の「常時使用される」とは、雇用契約書の有無等とは関係なく、適用事業所で働き、労務の対償として給与や賃金を受けるという使用関係が「常用的」であることを指し、雇用契約上はパート、アルバイトという名称でも「常用的」に働いている場合は、社会保険が適用されます。「常用的」とは次のいずれかに該当する方を指します。

  • フルタイム労働者(正社員等)
  • 短時間労働者(パート等)のうち、1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が同じ事業所で同様の業務に従事している通常の労働者の3/4以上

「日々雇い入れられる人」や「2か月以内の期間を定めて使用される人」等は対象外とされています。

※特定適用事業所(従業員数501人以上等の要件を満たす事業所)については適用範囲が拡大されています。

障害者雇用促進法

この法令の「常時雇用」とは1週間の所定労働時間が20時間以上で、1年を超えて雇用される見込みがある、または1年を超えて雇用されている労働者(1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の方は短時間労働者)とされており、この要件を満たす労働者に占める身体・知的・精神障害者の割合を「法定雇用率」以上にする義務があります。(民間企業の法定雇用率は現在2.3%のため、43.5人以上雇用している場合、障害者1人以上の雇用が必要。短時間労働者は原則0.5人とカウント)

以上、各法令における一例をご案内しました。詳細についてのご質問や、就業規則作成等のご依頼がございましたら、お気軽にTSCまでお問い合わせ下さい。

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