民事執行法改正(2)

著者:【弁護士】吉川 法生

※こちらの情報は2021年11月時点のものです

今回は、前回の財産開示手続に続いて債務者(開示義務者)以外の第三者からの情報取得手続についてご説明します。

前回ご説明しました財産開示手続は、直接の当事者である相手方(債務者)を対象とするものでした。
従前、この手続に関しては実効性が乏しいということで今回の改正に繋がったわけですが、当時、この議論と併せ、第三者からの情報取得が議論され、今回の創設に至りました。

第三者からの情報取得手続は、大きく分けて3種類あります。

①預貯金に関する情報取得手続

債務者の預貯金に対して差押等するには銀行等の支店を特定する必要があり、その把握は容易ではありませんでした。今回の改正では銀行等を第三者として申立できるようになり、銀行等から取得する情報に店舗が含まれることになりました。もっとも預貯金はいつでも引き出すことが可能ですので、差押が空振りになることも想定されます。そこで今回の改正により、第三者として振替機関及び口座管理機関が加わりました。このことで、振替社債等に関する情報を取得する手続が定められ、上場株式、投資信託受益権、社債、地方債、国債などの財産情報の取得が可能になりました

②不動産に関する情報取得手続

不動産は債務者の返済原資として重要な財産ですが、債権者が債務者名義の不動産の調査を行うことは困難です。そこで今回の改正により、裁判所に申立をすることにより登記所(法務局)から債務者が所有権の登記名義人である土地又は建物等の登記情報の提供を受けることができるようになりました。ただ、登記所における不動産に関するシステムの構築などの整備が必要であるため、公布の日から2年を超えない範囲内で政令で定める日までの間は適用しないとされています。また、不動産に関する情報取得手続きの申立は、まず(前回ご説明しました)債務者に対する財産開示手続を行い、その期日から3年以内にする必要があります。

給与債権に関する情報取得手続

個人が債務者である場合の重要な財産である給与債権の差押のための情報取得手続が新設されました。この手続により、給与から住民税を徴収している市町村(特別区を含む)や、厚生年金保険の事務を取り扱っている日本年金機構、その他国家公務員共済組合、国家公務員共済組合連合会、地方公務員共済組合、全国市町村職員共済組合連合会、日本私立学校振興・共済事業団から、債務者の勤務先会社等の存否、それが存在する場合の社名や住所を取得することができるようになりました。
ただし、この手続は、(ア)子の養育費など扶養義務等にかかる定期債権、(イ)人の生命もしくは身体の侵害による損害賠償請求権に限って申立が認められます。また、まず債務者に対する財産開示手続を行い、その期日から3年以内に申立てをする必要があります。