所有者不明土地関連法の改正(2)

著者:【弁護士】吉川 法生

※こちらの情報は2023年1月時点のものです

前回につづきまして、(1)相続等による所有不明土地の発生を予防するための仕組みの②土地を手放すための制度の見直し:相続土地国庫帰属制度の創設についてご説明いたします。

この「土地を手放すことの制度の見直し」についてですが、相続等により取得した土地を国庫に帰属させる制度が創設されました。土地を相続したとしても利用も管理もできず、むしろ土地を手放したいとのニーズが増加してきています。また、誰も土地の取得を望まず、土地の管理がなされないという状態にもなっています。
そこで、相続又は遺贈により取得した土地を手放して、国庫に帰属させることを可能とする制度を創設することになりました。ただし、国の管理コストや土地の管理に対するモラルハザードの問題がありますので、国庫への帰属には一定の要件が設けられ(詳細は政省令で規定されることになります)、法務大臣において要件を審査することになりました。
このため、土地所有者が相続土地国庫帰属制度を利用するに当たっては、下記の要件を満たす必要があります。

(ア)申請ができる土地所有者

申請ができる土地所有者は、相続又は相続人に対する遺贈により、土地の所有権の全部又は一部を取得した者です(国庫帰属法1条、2条1項)。
土地を自ら望んで取得したのではない土地所有者には、一定の限度で、土地の管理の負担を免除するのが相当と考えられるからです。

(イ)申請にかかる土地の形式的要件

申請にかかる土地は、以下のいずれにも該当しないことが必要です(国庫帰属法2条3項)。

  • 建物のある土地
  • 担保権や用益権が設定されている土地
  • 通路その他の他人による使用が予定される土地
  • 土壌汚染のある土地
  • 境界、所有権の存否・帰属・範囲について争いがある土地

(ウ)申請にかかる土地の実質的要件

申請にかかる土地は、通常の管理又は処分ができない土地に該当しないことが必要です。
その具体例として、①崖地、②工作物等の存在、③地中有体物の存在、④隣地所有者等との争訟が必要なこと、があげられ、⑤その他包括条項が設けられています(国庫帰属法5条1項)

国庫に帰属した土地は、原則として財務大臣が管理処分し(国有財産法3条3項、6条、8条)、農用地及び森林として利用されている土地については、農林水産大臣が管理処分します(国庫帰属法12条)。