従業員の退職リスクについて

著者:【社会保険労務士】早川 実

※こちらの情報は2024年6月時点のものです

少子高齢化による人手不足が進む中、従業員の「退職」はいつでも起こりうる企業のリスクの一つです。特に中小企業であれば従業員一人の比重が大きく、突然の退職は他の従業員を混乱させてしまったり、大切な顧客へご迷惑をお掛けしてしまったりして、経営の基盤を揺るがすことにもなりかねません。今回は従業員の退職リスクへの対応をご説明致します。

退職時のルールを決めておく

退職希望の従業員をいつまで会社に留めておくことが出来るかという問題があります。
雇用期間の定めのない従業員であれば、いつでも雇用契約解除(退職)の申入れができ、法律的には民法627条が適用され、退職の申入れをした日から「2週間」経過すると雇用契約は終了し退職となります。つまり、退職の申入れ後2週間はその従業員を会社の指揮命令下に置くことができ、即日退職を認める必要はないということになります。
ただし、労使間で合意した場合には2週間より長くしたり、短くしたりすることが可能です。そのため、就業規則において1か月前の退職届の提出を義務付けている規定を設けている企業も多くあり、ローカルルールの域にはなりますが、その場合には原則として就業規則の規定が適用されます
しかし、極端に長い退職申入れ期間を定めている場合には労働者の退職の自由が極端に制限されてしまうため、公序良俗に反し無効となる恐れがあります。
一般的に考えて1か月前の退職届の提出の義務付けは問題ないと考えられますが、2か月前を義務付けるのは難しいと言えるでしょう。ただ、どんな場合でも1か月前の退職届の提出を義務付けるというのは難しく、ケースに応じた臨機応変な対応は必要です。
なお、1か月前の退職届の提出が守られないケースはあるかもしれませんが、その規定を定めることにより従業員全体へ意識付ける効果はありますので、突然の退職というリスクを軽減させることは出来るでしょう。

突然の退職への対策として

前記のようなルールを定めていても、突然の退職というリスクは起こりうるものです。突然のために、引き継ぎも出来ずに退職してしまうことの最大の問題点は、「その人にしか分からないこと」が存在していることです。ですので、普段から情報を共有するようにし、業務の流れも出来る限りマニュアル化しておくことが大切です。それによって業務を透明化し、突然の退職時に混乱するリスクを低減させることができます。もっとも、退職時には有給休暇を消化するというケースもありますから、できれば3日程度で引継ぎが完了出来るような体制作りを普段からしておくのが望ましいでしょう。
なお、突然退職をする理由として、従業員のメンタル面に支障をきたしてしまったことが原因となるケースが少なくありません。職場の人間関係等から精神的に不安定になって、うつ病を発症してしまうというケースが多くなっていますので、普段から従業員とコミュニケーションをよく取り、雑談などの中から現れるサインを汲み取って、仕事上の不安などを話しやすくする環境を作ることが大切です。近年増加傾向にある「退職代行」というサービスを利用した退職の意思表示などは、従業員が自分の意思を伝えづらい環境にあることが原因の一つとなっているケースもありますので注意が必要です。

退職の意思表示をした従業員に対して、会社への忠誠心や高いモチベーションを求めることは非常に困難なことです。また、退職予定者をいつまでも引き止めることによる他の従業員への影響を考慮しますと、1か月前の申出を義務付けしたとしても、実際に残された時間はもっと短くなると考え、普段から対策を施しておく必要があると言えるでしょう。

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