人材の確保と流出

著者:【社会保険労務士】西本 哲司

※こちらの情報は2018年9月時点のものです

 厚生労働省と文部科学省の共同調査において大学生の就職内定率は91.2%(前年同期比0.6ポイント増)となり、調査開始以降、同時期での過去最高となっています(平成30年2月1日現在)。
 このような「超売り手市場」において企業のリスクとして注意する必要があるのが、求人が困難なことから発生する『人材の確保』および転職先が複数あると考え退職が増加していく『人材の流出』です。

人材の確保

 さて、人材を確保するために必要なことは何でしょうか?就職パンフレットの作成や会社説明会の開催時期・内容等と求人作業にはいろいろな段取り・イベントがありタイミングも大切です。しかし、一番大事なことは求人情報を充実させることではないでしょか。
 先ずは労働基準法に違反していない求人情報を作成し、次に求職者が企業を選定する時に注目するポイントに上乗せができないか?会社の特徴を表現できないか?等を検討します。

 求職者が注目するポイントは
『初任給の金額』、『賞与の回数』、『社会保険への加入の有無』、『仕事の内容』、『有給・休日情報』、『勤務時間帯』、『退職金の有無』等が考えられます。
 それに対して例えば、
『労働基準法以上の有給を付与している』、『有給を与えるタイミングを早くしている』、『福利厚生が他社よりも充実している』、『他とは違う仕事内容/仕事への達成感を含めた会社特徴を記載』等の特徴を上手く表現できれば求職者へアピールすることができます。

 単純に『初任給の金額』、『賞与の回数』を増やせば注目度は高いのですが、雇用後に会社に負担を及ぼすような求人は感心できません。また従業員のために社会保険に加入しなくても良い事業所でも任意に社会保険へ加入している事業所などをよく見かけますが、この場合も会社が保険料を半分負担することをお忘れないようにしてください。

人材の流出

 ここ最近の「超売り手市場」だと、

  1. せっかくいい人材が入社したが辞めてしまった。
  2. 長年勤続している者が別会社へ転職してしまった。

 ということが発生しやすくなります。
 1.については教育・指導を行ってこれから会社の戦力(利益)となる前にいなくなった。
 2.の場合は長年積み重ねてきたノウハウ・スキルおよびお客様との信頼関係についても一度に失ってしまいます。

 どちらにしても人材の流出は会社にとって大きな損失となります。しかも、人材の流出を防ぐ特効薬というものは存在しません。いろんな要因が積み重なって辞める方向に進んでいくものです。
 そうならないためにも会社としてはいろんな要因を事前に摘みとる努力が必要となります。一つ一つの要因を特定して解決していければ一番良いのですが、それはなかなか難しいことです。

 ただ、要因の中には不安がかなりの数をしめます。これをある程度解決する方法として、就業規則を整備し不安と思われることに対しての対策を記載しておくことも効果的です。
 例えば、『ハラスメント』、『服務』、『安全』、『解雇』等について従業員が納得するような対策を記しておくことです。これ以外にも就業規則に載せないような仕事上の規則・規定・業務フロー等を明文化することにより不安解消に繋がっていきます。

 ただ、これでも避けられない理由に『どうしても一緒に仕事をしたくない人がいる』、『仕事の量が多すぎる』、『賃金が安い』等があります。こういった問題については日頃からコミュニケーションをとることにより事前に対策を検討することが可能となるでしょう。

最後に

 この『超売り手市場』があとどれぐらい続くのかはわかりませんが、会社としては『労働基準法を遵守し』、『就業規則を整備し(上乗せおよび特徴を付けて)』、『働くことへの不安を解消』、『日常からコミュニケーションを行う』職場作りをしていくことによって、人材の確保と流出の予防につながればと願います。