突然の無断欠勤

著者:【社会保険労務士】西本 哲司

※こちらの情報は2023年1月時点のものです

突然、従業員が出社しなくなり連絡が取れなくなった…。
皆さんはそんな経験に遭遇したことはないでしょうか?そうなった時に何をしていいのかわからず、ただただ困ってしまったり、もしくはそんな従業員は当社に合わないと考えいきなり解雇しようとする事業所もあるかも知れません。対応方法は状況に応じていろいろとあると思いますが、私は下記の流れで対応するようにお勧めしています。

流れ

1.

対象者へ連絡を取ります(記録をとっておく)
●電話は複数回かけます(日をおいて数回)。
●メールがあれば出社の意思の確認をします。
●関係者への連絡先がわかれば連絡をします(身元保証書をとっておく)。

2.

①の対応でも連絡が取れない場合には、郵送で『出社命令』を数回送ります。この時に『退職願い』も付けておくと、退職したい従業員の方の場合には提出し易いかと思います。送ったという証明の為、追跡サービス、内容証明等のサービス利用もご検討ください。

3.

この段階でも連絡がない場合(2週間以上)には、解雇(通常解雇もしくは就業規則による懲戒解雇)もしくは自然退職を検討します。理由としては、会社への不利益(社会保険料の負担、業務分担の予定が立たない、他の従業員への影響等)が発生するためです。
解雇を行う場合には、30日前に解雇予告通知をする必要があります。この場合は相手に郵便が届いて30日後です。『解雇予告通知』を送る前に『出社命令』に「期日までに連絡が取れない場合には、就業規則の定めに基づいて解雇手続きを行う」等の内容を載せておくことが望ましいです。『解雇予告通知』を送る時には内容証明や公示送達等を利用します。
なお、懲戒解雇とする場合には解雇予告除外認定申請があります。この申請で、解雇予告制度により労働者を保護するに値しないほどの業務違反等が労働者に存在すると労働基準監督署長が認定した場合、解雇の予告等は不要です。なお、上記基準と社内の懲戒解雇基準とが必ずしも一致するとは限りませんので、監督署への事前相談をお勧めします。
自然退職とは無断欠勤を退職の意思表示とみなす方法です。就業規則にその旨の定めがされ、社員に周知されている場合には、その定めにより有効となります。この場合には30日前の通知は必要ありません。後で無断欠勤の理由が判明し従業員に責任がないと判断をした場合には復職についての検討も必要です。

最後に

この中で一番大事なことは①の「こちらから連絡を取ること(欠勤の理由を知ること)」です。会社は従業員に対して、安全に働く環境を提供する法的義務を負っています(安全配慮義務)。例えば、従業員に無断欠勤があった場合に何の連絡も取らないでいると、仮にその従業員が何らかの病に倒れて亡くなってしまった場合、会社は安全配慮義務違反を理由に、責任を負うことになる可能性がでてきます。
次に大事なことは、どうしても自然退職もしくは解雇をせざるを得ない状況となった時に、「トラブル」とならないように会社がどれだけ丁寧に確認作業を行っていたか(どのような連絡を取ったか、何の書類を送ったか)という記録を残すようにしておくことが必要です。
また、①~③の中で連絡が取れた場合には「対話」をしっかり行って対策方法を相互にご検討願います。

この流れは一つの例であり簡単な説明となっております。あくまでも参考としてご活用ください。

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